仏壇の前にある日常の風景
今も自分は、仏壇の前にある部屋のテーブルで椅子に腰かけ、パソコンと向き合っています。
コーチングやブログを書く時間の多くを、この場所で過ごしています。
ほぼ毎朝、そして毎晩、仏壇に向かって挨拶をします。
特別な言葉をかけるわけではなく、「おはようございます」「今日も一日お疲れさまでした」と心の中でつぶやくような感覚です。
その何気ないやり取りが、一日の始まりと終わりの節目になっているようにも感じます。
神床へ向かう挨拶の時間
仏壇への挨拶とともに、神床にも手を合わせています。
ご先祖さんが大切にされてきた場所でもあり、自分にとっても、心を整えるための場所のひとつになっています。
神棚や神床は、何かを強く願う場所というより、今ここにある日常を静かに確認する場所のようにも思えます。
今日も無事に過ごせていることへの感謝が、自然とそこに集まってくるように感じます。
ご先祖さんがいるから、今の自分がいる
ふと考えると、自分は一人でここに存在しているわけではありません。
ご先祖さんがいて、その命が連なってきたからこそ、今の自分があります。
普段はあまり意識しないことかもしれませんが、仏壇の前に立つと、そうした連続性を静かに思い出すことがあります。
自分の命は、突然ここに現れたものではなく、長い時間の流れの中に置かれているものなのだと感じます。

遷宮と、途切れない時間
これまでの回でも触れてきましたが、神社は遷宮をくり返しながら、姿を保ち続けています。
屋根や柱は新しくなっても、場所と祈りと物語は、そのままつながっていきます。
人の命が世代を越えて受け継がれていくように、神社もまた、形を変えながら同じ「場」として生き続けているようにも思えます。
その連続性に、どこか安心のようなものを感じることがあります。
ハーンが見つめた「連なり」の感覚
ハーンは、日本の暮らしの中に、生きている者と死者、過去と現在とが、ゆるやかにつながっている感覚を見ていたように思えます。
祈りの場が特別に切り離されるのではなく、日常のすぐそばに置かれていること。
それは、命のつながりを日々の暮らしの中で感じ続けるための、日本なりの知恵だったのかもしれません。
今の暮らしに流れているもの
仏壇に向かい、神床に挨拶し、そしてパソコンに向かう。
この一連の流れは、自分にとって特別な儀式というより、生活のリズムの一部になっています。
祈りと仕事と生活とが、切り離されることなく、同じ一日の中に並んで存在しているようにも感じます。
それは、意識せずとも身についてきた、日本的な暮らし方なのかもしれません。
ハーンのまなざしと、今の自分
このシリーズを通して、ハーンが見た日本と、今の自分が生きている日本とを、静かに重ねてきました。
道ばたの祠、盆の迎え火、神在月、新嘗祭、神棚、稲荷、仏壇と神床。
どれも特別な非日常というより、日々の暮らしの中に静かに溶け込んでいる風景だったように思えます。
時代は変わっても、祈りのかたちや、命をつなぐ感覚は、大きくは変わっていないのかもしれません。
このシリーズの経緯と、最後のまとめ
このシリーズは、ラフカディオ・ハーンが見つめた「日本」という国と、今ここに生きている自分の「日本」とを重ねてみたい、そんな思いから始まりました。
最初は、松江の朝の空気や道ばたの祈りといった、身近な風景から書き始めました。
そして、お盆、神在月、神棚、稲荷と狐火、新嘗祭を経て、最後に仏壇と神床へとたどり着きました。
こうして振り返ってみると、どの回も「特別な日本」ではなく、「暮らしの中の日本」を描いてきたように思えます。
ハーンが百年以上前に見た日本と、今の自分が生きている日本は、形は変わっても、根っこの部分では静かにつながっているのかもしれません。
これからも自分は、この土地の空気の中で、同じように祈り、同じように暮らし続けていくのだと思います。
書籍名:Glimpses of Unfamiliar Japan(1894, Lafcadio Hearn)
関連章:家庭の信仰と祖先祭祀に関する随筆より
参照主題:Ancestral Presence and Daily Life
最後になりましたが、ラフカディオ・ハーンの印象的な言葉からの引用です。自分たちが必要な言葉のように感じます。
“The simple faith of the Japanese people is not a thing of temples alone, but a part of their daily life.”
日本人の素朴な信仰心は、寺や社だけにあるものではなく、日常の暮らしそのものの一部である。
出典
Lafcadio Hearn
Glimpses of Unfamiliar Japan
“At a Shinto Shrine”
今日も佳き日に
コーチミツル
#ハーンシリーズ #仏壇 #神床 #ご先祖さん #命の連なり #日常の祈り #松江 #ラフカディオハーン
(参考)ハーンシリーズ8回分 一般リンク用紹介文
第1回(2025年12月15日)
静けさの国に降り立つ ― ハーンの第一印象と、松江の朝に流れる空気
https://coach-mitsuru.com/archives/4311
第2回(2025年12月18日)
地蔵と道ばたの祈り ― 日常に宿る日本の“やさしさ”
https://coach-mitsuru.com/archives/4315
第3回(2025年12月21日)
祖先とともに生きる ― 盆の風景と、ハーンが見た“死者のいる日本”
https://coach-mitsuru.com/archives/4328
第4回(2025年12月24日)
神在月の迎えと送り ― 神々の国に流れる“変わらない時間”
https://coach-mitsuru.com/archives/4330
第5回(2025年12月27日)
家の祀りと神棚 ― 日常に置かれた“もう一つの神社”
https://coach-mitsuru.com/archives/4332
第6回(2025年12月30日)
稲荷と眞名井の滝 ― 祠が移され、狐火が語られる夜
https://coach-mitsuru.com/archives/4335
第7回(2026年1月2日)
新嘗祭と献穀米 ― 実りに感謝する祈りのかたち
https://coach-mitsuru.com/archives/4337
第8回(2026年1月5日)
仏壇と神床 ― 連続していく祈りと、受け継がれる命
https://coach-mitsuru.com/archives/4339