自分の部屋には、トランペットに関係する教本や練習器具がいろいろあります。
アドリブの練習本、Jazzの教本、アンブシュアを整える器具。最近では、トランペットを吹かなくても運指の練習ができる「PAMPET TruTra」も買いました。
なぜか、指揮用のタクトまで持っています。
タクトは、すぐに使う予定があったわけではありません。(苦笑)
「いつか使うかもしれない」
そう思って、つい衝動買いしてしまいました。
教本や練習器具も、買ったときには使うつもりです。しかし、しばらくすると本棚や引き出しに収まり、買っただけで安心してしまうように思います。
ダイエット本を買っただけで、少し痩せた気になる
これは、楽器に限ったことではないでしょう。
ダイエット本、筋力トレーニングの本、鉄アレイ、腹筋ローラー、健康器具。
買ったときには、
「今度こそ痩せよう」
「これなら自宅でも続けられそうだ」
と思います。
ところが数日後には、鉄アレイが部屋の隅に置かれ、ダイエット本はきれいなまま本棚に並びます。
体重はまだ変わっていないのに、買った瞬間には、少し健康になったような気がするのです。
人は、目標に向かって前進したと感じると、その後の行動が緩むことがあります。心理学の研究でも、目標が進んだという感覚が、その後の選択に影響する場合があると報告されています[1]。
健康器具を買うことは、変化そのものではありません。
変化のための準備ができただけです。
買った日は、必ず一度使う
健康器具を飾りにしないために、まず決めたいのが、
買った日を「初回使用日」にする
ということです。
鉄アレイなら、5回だけ持ち上げる。
腹筋ローラーなら、一度だけ転がす。
ダイエット本なら、1ページだけ読む。
体重計なら、その日の数字を記録する。
「買った」という出来事と、「使った」という行動を、同じ日に結びつけます。
買ったときの勢いを、収納するためではなく、最初の一歩に使うのです。
一日の流れの中に、置き場所をつくる
続けるためには、単に「毎日運動する」と決めるだけでは足りません。
いつ、どこで行うかを決めることが必要です。
ただし、無理に予定を詰め込むのではなく、一日の流れの中で、自然に入りやすい時間を探すことが大切だと思います。
自分の場合は、朝の邪魔されない自由時間があります。
その時間を「朝自活」として、ブログを書いたり、筋力トレーニングをしたり、トランペットの練習をしたりしています。
誰かから連絡が来ることも少なく、予定に追われる前の時間です。
そのため、新しい教本や練習器具を使うなら、この朝自活の中に入れるのが、自分にとっては最も自然です。
朝自活の最初に、運指器具を1分使う。
ブログを書いたあとに、教本を1ページ開く。
筋力トレーニングの前に、腹筋ローラーを3回行う。
このように、すでにある生活の流れに、新しい行動を少しだけ加えます。
心理学では、「この状況になったら、この行動をする」と具体的に決める方法を「実行意図」と呼びます。こうした計画は、目標の実行を後押しすると報告されています[2]。
ただし、大切なのは、一般的に良いとされる時間ではありません。
朝がよい人もいれば、昼休みや入浴前がよい人もいます。
自分の生活を振り返り、
「ここなら無理なく入れられる」
という時間を見つけることです。
最初から頑張りすぎない
健康器具を買うと、
「毎日30分運動する」
「1カ月で3キロ痩せる」
と、大きな目標を立てたくなります。
しかし、疲れている日に30分できないと、何もしないまま終わってしまいます。
だから最初は、小さく始めます。
鉄アレイを5回。
スクワットを3回。
ダイエット本を1ページ。
これだけでは、すぐに痩せないでしょう。
しかし、最初に必要なのは、立派なトレーニングではありません。
運動を始められる自分をつくることです。
習慣形成の研究では、同じような状況で行動を繰り返すことで、その行動が徐々に自動化していくことが示されています[3]。
毎日30分を3日続けるより、毎日1分を長く続ける。
まずは健康器具に触れることを、一日の流れの中に入れるのです。
持っている自分から、使っている自分へ
使っていない健康器具を見ると、
「また無駄遣いをした」
「自分は意志が弱い」
と思うかもしれません。
しかし、それを買ったときには、健康になりたいという気持ちがあったはずです。
自分がトランペットの教本や練習器具を買ったのも、上達したいと思ったからです。
タクトを衝動買いしたのも、いつか使っている自分を少し想像したからでしょう。
買ったことを責める必要はありません。
ただし、買うことを行動の代わりにはしない。
ダイエット本を買ったら、1ページ開く。
鉄アレイを買ったら、5回持つ。
そして、自分の一日の流れの中で、続けやすい場所に置いてみる。
持っている自分から、使っている自分へ。
変化は、次の健康器具を買ったときではなく、すでに持っている物を、今日の生活の中で1分使ったところから始まるのかもしれません。
この記事が、本棚や部屋の隅で出番を待っているダイエット本や健康器具を、もう一度手に取るきっかけとして、必要な人に届きますように。

引用・参考文献
[1]目標が進んだと感じることで、その後の行動が緩む可能性について
Fishbach, A., & Dhar, R.(2005)
“Goals as Excuses or Guides: The Liberating Effect of Perceived Goal Progress on Choice.”
Journal of Consumer Research, 32(3), 370–377.
[2]状況と行動を結びつける「実行意図」について
Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P.(2006)
“Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-Analysis of Effects and Processes.”
Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.
[3]同じ状況での反復による習慣形成について
Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J.(2010)
“How Are Habits Formed: Modelling Habit Formation in the Real World.”
European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.
今日も佳き日に
コーチミツル
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