660.自分の中の、まだ押したことのないボタン(「宝の持ち腐れ」について考える)

小学生のころ、初めてラジカセを買ってもらったときのことを覚えています。

ラジオとカセットテープデッキが一緒になった、当時としてはなかなかうれしい電化製品でした。

自分は買うまではカタログを何回も読んで、買った後も説明書をかなり読み込んでいました。

録音はどうするのか。
早送りや巻き戻しはどのボタンか。
ラウドネススイッチを入れると、小さな音でも低音や高音が補われて、バランスよく聞こえる。

「こんな機能まであるのか」

そんなことを一つひとつ確かめながら、使える機能を全部知ろうとしていた記憶があります。

せっかく買ったのだから、できることは全部使ってみたい。

そんな気持ちだったのでしょう。

ところが最近は、どうでしょう。

家の中を見渡してみると、電化製品に一度も使ったことのない機能が結構あります。

いや、最近はもっと難しい。

そもそもボタンが見えません。

先日、AirPodsを買いました。

イヤホンの部分を触ったり、上下になぞったり、押したりすることで操作できます。

でも、そんなことを知らなければ、見ただけではなかなか分かりません。

そこに分かりやすいスイッチがあるわけでも、

「ここを押してください」

と書いてあるわけでもありません。

説明書を読んだり、誰かから教えてもらったり、たまたま知ったりしなければ、その機能を一度も使わないまま終わることもあると思います。

そこで、ふと思いました。

人間も同じなのではないだろうか・・・。

機能がないのではなく、知らないだけ

昔から「宝の持ち腐れ」という言葉があります。

どんなに価値のあるものを持っていても、それを使わなければ、その価値を十分に生かすことができない。

でも、人の場合はもう少し複雑なのかもしれません。

宝を持っていることが分かっていて使わないのではなく、

自分の中にそんなものがあること自体に、気づいていない。

そんなこともあると思うのです。

人前で話すこと。

誰かの話を聴くこと。

人と人をつなぐこと。

場の雰囲気を感じ取ること。

文章を書くこと。

音楽を奏でること。

誰かを安心させること。

本人にとっては当たり前すぎて、それが自分の強みだと思っていないこともあります。

ところが、他の人から、

「いつも自然にそれをやっていますね」

「そういうとき、生き生きしていますね」

「周りの人は、そこを頼りにしていますね」

と言われて、

初めて、

「そうなのかな」

と思う。

見えなかったボタンの存在に、初めて気づくようなものです。

才能をつくるのではなく、可能性が生きる環境をつくる

スポーツの世界にも、そんなことを考えさせられる関係があります。

たとえば、大谷翔平選手と栗山英樹監督。

もちろん、大谷選手には誰が見ても分かるほどの大きな才能がありました。

ただ、当時は投手か打者か、どちらか一つに絞ることが一般的な考え方でした。

その中で栗山監督は、大谷選手本人の意思を尊重しながら、投手と打者の両方に挑戦する道を選びました。

栗山監督が大谷選手に才能を与えたわけではありません。

もともと本人の中にあった可能性を、既存の枠にはめずに生かせる環境をつくった。

そう考えることもできます。

高橋尚子さんと小出義雄監督の関係にも、興味深いものがあります。

高橋さんによれば、小出監督は選手によって声のかけ方を変えていたそうです。

誰にでも同じことを言うのではなく、その人を見ながら、その人自身が「やってみよう」と思えるように関わる。

私はここに、とても大切なものがあるように思います。

コーチがボタンを押すわけではない

これは、自分が学んでいるコーチングにもつながります。

コーチが、

「あなたにはこの才能があります」

と決めるわけではありません。

まして、

「あなたはこちらへ行きなさい」

と導くわけでもありません。

見えている事実を伝える。

感じたことを問いとして返してみる。

そして、

「ここには何があるのでしょうね」

と、一緒に探求する。

本人が話しているうちに、

「あれ?」

と何かに気づくことがあります。

これまで何とも思っていなかった経験。

何度も人から頼まれてきたこと。

なぜか夢中になれること。

自分では普通だと思っていたこと。

そこに、自分でも知らなかったボタンがあるのかもしれません。

そして、そのボタンを実際に押すのは本人です。

押してみて、

「あ、こんなことができるんだ」

と気づく。

もう一度試してみる。

少し使い方が分かってくる。

やがて、それがその人らしい力になっていく。

才能が「開花する」というのは、案外そんなことなのかもしれません。

まだ使っていない機能があるかもしれない

自分は、小学生のころのように、今使っている電化製品の説明書を隅から隅まで読むことはなくなりました。

だから、おそらく今も知らない機能がたくさんあります。

それでも生活はできます。

それはそれで構いません。

人についても、持っているものを全部使わなければならないわけではないでしょう。

ただ、

「自分にはこれしかない」

と思っているとしたら、少しもったいない。

もしかすると、

「ない」のではなく、

まだ見つけていないだけかもしれない。

見えないところに、まだ一度も触ったことのないボタンがあるのかもしれません。

そして、それは一人で探さなければならないものでもありません。

誰かとの対話の中で気づくこともある。

誰かから事実を伝えてもらって初めて気づくこともある。

そして、自分で確かめてみる。

コーチングとは、そんな「見えないボタン」を一緒に探求していく時間でもあるのかもしれません。

あなたの中にも、まだ一度も押したことのないボタンがあるとしたら、それは何でしょうか。

この言葉が、必要な人に、必要な時に、届きますように・・・

今日も佳き日に
コーチミツル

#宝の持ち腐れ #コーチング #才能 #可能性 #自己理解 #気づき #対話 #強み #自分らしさ #WellBeing


Coach Mitsuruをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!