563.買って安心していないか(ダイエット本や健康器具を「飾り」にしないために)

自分の部屋には、トランペットに関係する教本や練習器具がいろいろあります。

アドリブの練習本、Jazzの教本、アンブシュアを整える器具。最近では、トランペットを吹かなくても運指の練習ができる「PAMPET TruTra」も買いました。

なぜか、指揮用のタクトまで持っています。

タクトは、すぐに使う予定があったわけではありません。(苦笑)

「いつか使うかもしれない」

そう思って、つい衝動買いしてしまいました。

教本や練習器具も、買ったときには使うつもりです。しかし、しばらくすると本棚や引き出しに収まり、買っただけで安心してしまうように思います。

ダイエット本を買っただけで、少し痩せた気になる

これは、楽器に限ったことではないでしょう。

ダイエット本、筋力トレーニングの本、鉄アレイ、腹筋ローラー、健康器具。

買ったときには、

「今度こそ痩せよう」
「これなら自宅でも続けられそうだ」

と思います。

ところが数日後には、鉄アレイが部屋の隅に置かれ、ダイエット本はきれいなまま本棚に並びます。

体重はまだ変わっていないのに、買った瞬間には、少し健康になったような気がするのです。

人は、目標に向かって前進したと感じると、その後の行動が緩むことがあります。心理学の研究でも、目標が進んだという感覚が、その後の選択に影響する場合があると報告されています[1]。

健康器具を買うことは、変化そのものではありません。

変化のための準備ができただけです。

買った日は、必ず一度使う

健康器具を飾りにしないために、まず決めたいのが、

買った日を「初回使用日」にする

ということです。

鉄アレイなら、5回だけ持ち上げる。

腹筋ローラーなら、一度だけ転がす。

ダイエット本なら、1ページだけ読む。

体重計なら、その日の数字を記録する。

「買った」という出来事と、「使った」という行動を、同じ日に結びつけます。

買ったときの勢いを、収納するためではなく、最初の一歩に使うのです。

一日の流れの中に、置き場所をつくる

続けるためには、単に「毎日運動する」と決めるだけでは足りません。

いつ、どこで行うかを決めることが必要です。

ただし、無理に予定を詰め込むのではなく、一日の流れの中で、自然に入りやすい時間を探すことが大切だと思います。

自分の場合は、朝の邪魔されない自由時間があります。

その時間を「朝自活」として、ブログを書いたり、筋力トレーニングをしたり、トランペットの練習をしたりしています。

誰かから連絡が来ることも少なく、予定に追われる前の時間です。

そのため、新しい教本や練習器具を使うなら、この朝自活の中に入れるのが、自分にとっては最も自然です。

朝自活の最初に、運指器具を1分使う。

ブログを書いたあとに、教本を1ページ開く。

筋力トレーニングの前に、腹筋ローラーを3回行う。

このように、すでにある生活の流れに、新しい行動を少しだけ加えます。

心理学では、「この状況になったら、この行動をする」と具体的に決める方法を「実行意図」と呼びます。こうした計画は、目標の実行を後押しすると報告されています[2]。

ただし、大切なのは、一般的に良いとされる時間ではありません。

朝がよい人もいれば、昼休みや入浴前がよい人もいます。

自分の生活を振り返り、

「ここなら無理なく入れられる」

という時間を見つけることです。

最初から頑張りすぎない

健康器具を買うと、

「毎日30分運動する」
「1カ月で3キロ痩せる」

と、大きな目標を立てたくなります。

しかし、疲れている日に30分できないと、何もしないまま終わってしまいます。

だから最初は、小さく始めます。

鉄アレイを5回。

スクワットを3回。

ダイエット本を1ページ。

これだけでは、すぐに痩せないでしょう。

しかし、最初に必要なのは、立派なトレーニングではありません。

運動を始められる自分をつくることです。

習慣形成の研究では、同じような状況で行動を繰り返すことで、その行動が徐々に自動化していくことが示されています[3]。

毎日30分を3日続けるより、毎日1分を長く続ける。

まずは健康器具に触れることを、一日の流れの中に入れるのです。

持っている自分から、使っている自分へ

使っていない健康器具を見ると、

「また無駄遣いをした」
「自分は意志が弱い」

と思うかもしれません。

しかし、それを買ったときには、健康になりたいという気持ちがあったはずです。

自分がトランペットの教本や練習器具を買ったのも、上達したいと思ったからです。

タクトを衝動買いしたのも、いつか使っている自分を少し想像したからでしょう。

買ったことを責める必要はありません。

ただし、買うことを行動の代わりにはしない。

ダイエット本を買ったら、1ページ開く。

鉄アレイを買ったら、5回持つ。

そして、自分の一日の流れの中で、続けやすい場所に置いてみる。

持っている自分から、使っている自分へ。

変化は、次の健康器具を買ったときではなく、すでに持っている物を、今日の生活の中で1分使ったところから始まるのかもしれません。

この記事が、本棚や部屋の隅で出番を待っているダイエット本や健康器具を、もう一度手に取るきっかけとして、必要な人に届きますように。


引用・参考文献

[1]目標が進んだと感じることで、その後の行動が緩む可能性について

Fishbach, A., & Dhar, R.(2005)
“Goals as Excuses or Guides: The Liberating Effect of Perceived Goal Progress on Choice.”
Journal of Consumer Research, 32(3), 370–377.

[2]状況と行動を結びつける「実行意図」について

Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P.(2006)
“Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-Analysis of Effects and Processes.”
Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.

[3]同じ状況での反復による習慣形成について

Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J.(2010)
“How Are Habits Formed: Modelling Habit Formation in the Real World.”
European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.

今日も佳き日に

コーチミツル

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