
先日、ICFコアコンピテンシー※の学習の中で「質問」と「提案(リクエスト)」の語源について話がありました。
その内容が、これまでの学びと一気につながり、深い納得につながりました。
というのも、もともと自分はコアコンピテンシーを 日本語の翻訳文を中心に学んできたタイプでした。
もちろんそれでも理解できるのですが、どうしても“言葉の奥にあるニュアンス”までは受け取りきれない感覚がありました。
ところが1年前から、コアコンピテンシーを 英語の原文で読む機会 が増え、この「原文で触れる」という学び方が、自分の理解を大きく広げてくれています。
今日の気づきは、その積み重ねが形になった瞬間でした。
質問(question)の奥にある“quest”
question という言葉の中心には、quest(探求・冒険) が入っています。
これを見た瞬間、質問の本質が立ち上がってきました。
質問とは、
質問者が答えを引き出すためのものではなく、
質問を受けた側が自分を探求していくための入り口。
翻訳文だけを読んでいた頃は「クライアント中心」という言葉で理解していたものが、
原文に触れることで
“そうか、質問の語源そのものがクライアントの探求を表しているんだ”
と、深さが変わった感覚があります。
request(提案・要望)も同じ“quest”
さらに、提案を意味する request にも、同じ quest が含まれています。
一般的な「提案」という日本語からは、
どうしても「方向性を示す」「改善案を渡す」というニュアンスが強いですが、
request にはまったく違う空気があります。
“あなたの探求をもう一段深めるために、こんな視点はどうですか?”
という、あくまで“探求の入口を示すだけ”の存在。
扱うかどうかを決めるのはクライアント自身で、
主体性はまったく奪われません。
原文で読んでいるからこそ、
このニュアンスの違いがとてもクリアに感じられました。
一般的な提案と、コーチングのリクエストの違い
原文の観点で整理してみると、両者の違いがより明確になります。
- 一般的な提案:答えや方向性を“示す”
- 上司の提案:行動を促す目的がある
- コンサルの提案:最適解を“与える”
一方でコーチの request は、クライアントの探求を深めるための “補助線” に過ぎません。
答えは渡さない。
選択も委ねられている。
だからこそクライアントの主体性が守られる。
この理解は、翻訳だけではなく
原文を読み込んできた1年間 があったからこそ、深く腑に落ちたように思います。
原文に触れるからこそ、言葉の本質が見えてくる
question も request も、どちらも quest=探求 を中心に持つ言葉。
そう考えると、
- 質問とは「自分自身を探求する旅の入り口」
- リクエストとは「その旅をもう一段深めるための、そっと差し出す灯り」
どちらも、相手の内側の旅に敬意を払う関わりです。
1年前に原文で学ぶ時間を持っていなければ、今日の気づきはここまで深くならなかったかもしれません。
言葉の源に触れることは、理解の質を静かに、でも確実に変えていくのだと実感しています。
あなたの提案や要求は相手のためのものですか?
あなたの質問は相手の自分自身への探求につながりますか?
どうしたらQUESTな言葉を投げかけられるのでしょうか?
※ICF コア・コンピテンシーとは?
ICFコア・コンピテンシーとは、「プロのコーチに共通して求められる、基本かつ不可欠な能力・行動特性」のこと。高いパフォーマンスを発揮するコーチが備えている能力の「核」です。
ICFではこのコンピテンシーを最新版で整理しており、その構造は以下の 4つの主要領域(ドメイン) に分かれています。
Foundation(基盤) — 倫理観、コーチとしてのマインドセットなど
Co-Creating the Relationship(関係性の共創) — クライアントとの信頼関係、合意の設定、安全な場づくり
Communicating Effectively(効果的なコミュニケーション) — 傾聴、質問、クライアントの気づきを促す対話など
Cultivating Learning and Growth(学びと成長の促進) — クライアントの気づきと行動変容を支え、持続的な成長をサポート
この構造は単なる理論ではなく、世界中のコーチが共通で使う「プロとしての基準」であり、資格認定(ACC, PCC, MCC など)やコーチングの質を保つための土台でもあります。
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今日も佳き日に
コーチミツル
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