
☆どうして「断る勇気」が大切なのか
人から何かを頼まれたとき、断るのが苦手な方が多いのではないかと思います。私自身もずっとそうでしたし、今も断ることが苦手な部類だと思います。それは、相手の期待に応えたい、嫌われたくない、助けになりたい等、相手とのかかわり方の中でそのような思いが先に立ち、自分の直感や心の声をないがしろにしてしまう。
でも、そうして断れなかったことで、私は人生の中でいくつもの大きな代償(自分としては)を払ってきました。このブログでは、私が経験した「断れなかったゆえの後悔」と、そこから学んだ「断る勇気」の大切さについてお伝えしたいと思います。
1. 断れなかった過去のエピソード
宍道湖一周駅伝で倒れた話
私はかつて、3年連続で宍道湖一周駅伝の斐川から出雲までの8.1㎞区間の選手として走っていました。しかし、ある年に転勤があり、その年は新しい職場に慣れるのに精一杯。しかも決算期で慣れない仕事もあり残業が毎日続き多忙だったのですが、毎年走っていたこともありチームからの依頼を断れず、練習不足のまま出場しました。
最初は若さで乗り切るつもりで飛ばしていましたが、途中から失速、結果は残り1kmの橋のたもとで脱水症状で途中で倒れ、そのまま救急車で病院へ搬送されました。点滴を打って症状が軽くなりその日のうちに帰ることはできたのですが、私のせいでチームも棄権で記録なしとなり、選手をはじめ関係者全員に迷惑をかけてしまいました。後で皆がそのことに触れずに何も言わないようにしてくれたのもつらかった。もし断っていれば、こんな結果にはならなかったのに、と今でも思い出して後悔することがあります。
スポーツでの大怪我
スポーツで汗をかくのは好きでしたが、サッカーはあまり経験がなく、そんな中で同期にメンバーが足りないからと頼まれて出場した時のことですが、開始から3分、恥ずかしながら慣れないせいでボールを空振りしてしまい、右膝前十字靭帯を損傷し、手術と2ヶ月の入院となりました。
それから5年、リハビリも順調で何とか回復した時のこと、これも転勤後すぐにバレーボールに誘われました。バレーボールは以前からやっていた競技だったので、やることには問題なかったのですが、気が進まないアタッカーのポジションを任され、ブロックの着地の際に再び同じ靭帯を損傷。またもや手術と2ヶ月の入院をすることになりました。
今でも右膝は、冬になると痛みますし、正座もできません。これもまた、「断っていれば…」という後悔の残る出来事でした。
2. どうして人は断れないのか
私自身、当時は、相手を困らせたくない、申し訳ない、という気持ちがあり断れなかったのですが、ある意味、それが、優しさだと考えていたように思います。ただ、今は、それは本当の優しさとは違うのではないかとも考えています。
心理学者アダム・グラントは、「人は“ギバー”(与える人)・“テイカー”(奪う人)・“マッチャー”(バランスを取る人)の3タイプに分かれる」と述べています。優しすぎる“ギバー”は、時として自分を犠牲にしすぎてしまう傾向があると言われています。
また、断れない人には「いい人症候群(people-pleasing)」の傾向があるとも言われ、これが慢性的なストレスや燃え尽き症候群につながる可能性もあります。
では、そのようなことが無いようにするには、どうしたら、きっぱりと断ることができるのでしょうか。
3. きっぱりと断るための3つのヒント
① 自分の「違和感」に正直になる
「なんとなく嫌だな」「気が進まない」――その違和感は、自分も何回か経験していますが、自分を守るためのサインではないかと思います。まずその気持ちに気づいて、もみ消すことなく正直になりましょう。
② 断る理由を正直に、でも簡潔に伝える
”正直に””簡潔に”とは、たとえば、「今は体調が優れないので」「仕事が立て込んでいて難しいです」など、シンプルかつ誠実な言葉で十分だと思います。枕詞で相手のことを思いやる言葉、自分の場合ですと「選手が足りなくて困っておられますね。」「人集め頑張ってますね」等一言入れてもよいかもしれません。ただ、断るときに長々と説明する必要はなくて良いと思います。
③ 「断る」=「人間関係の終わり」ではない
本当に自分を大切に思ってくれている人は、あなたが断っても関係を壊すことはありません。むしろ、自分の限界をきちんと伝えることで、信頼関係が深まることもあります。もちろん、断って友人関係が無くなるのであれば、それくらいの関係だったということも言えるでしょう。

断る勇気
過去の経験を通じて、「やりたくないことを無理してやる」ことのリスクと、「断る勇気」の大切さを身をもって知りました。
もし、今これを読んでいる貴方が、私と同じように断れずに悩んでいるなら、どうか一度立ち止まって、自分の心に正直になってみてください。
大切な自分自身を守る選択をするという意味で断る勇気は、決して誰も否定できません。なぜなら、貴方の時間と身体、そして心は、何よりも大切にされるべきものだからです。
今日も佳き日に
コーチミツル