636.「見ている」と「見えている」は違う ― コーチングと観察力

ある方から、

「見ていない」

という言葉をもらうことがありました。

その言葉が、少し自分の中に残りました。

というのも、自分はコーチングを学び始めてから約20年、「観察する」ということをかなり意識してきたからです。

コーチにとって、観察力はとても大切だと思っています。

相手が話している言葉だけではなく、表情、声の調子、間、いつもとの違い。

そうした小さな変化にも目を向ける。

自分なりに、日常生活の中でも観察する力を鍛えてきたつもりでした。

それでも、

「見ていない」

と言われた。

では、自分は本当に見ていなかったのでしょうか。

少し考えてみました。

「らんらんランニング」で景色を探していた

自分は足を痛める前の数年間、「らんらんランニング」と名づけて走っていました。

アメーバコーチミツルのブログ

タイムを競うためのランニングではありません。

走ることそのものと、途中の景色を楽しむファンランニングです。

季節の花。

空の色。

田んぼや山の様子。

道端で見つけた、ちょっと面白いもの。

走っていて気になるものを見つけると、立ち止まって写真を撮ります。

そして、その写真と一緒にAmebaブログへ投稿していました。

だから自分にとっての「らんらんランニング」は、ただ走るだけではありませんでした。

「今日は何が見つかるかな」

そんな気持ちで周囲を見ながら走る時間でもありました。

タイムだけを気にして前ばかり見ていたら、きっと通り過ぎていたものがたくさんあったと思います。

横を見る。

空を見る。

立ち止まる。

時には振り返る。

そして、面白いと思ったものを写真に撮る。

そんなことを数年間続けていました。

振り返ってみれば、これも自分の観察力を鍛える一つの習慣だったのかもしれません。

「髪、切られました?」

人との関わりでも、ちょっとした変化には比較的気づく方だと思います。

例えば、

「あれ、髪を切ったかな?」

と思うことがあります。

そんな時は、相手との関係性や状況を考えながら、

「髪、切られました?」

と伝えてみることがあります。

すると大抵、

「そうなんですよ」

と返ってきます。

ここで自分が気をつけているのは、評価しないことです。

「その方が似合いますね」

「前よりいいですね」

となると、そこには自分の評価が入ります。

まずは、

「変化に気づいた」

というところまで。

もちろん最近は、外見について触れられること自体を好まない人もいます。

だから、気づいたことを何でも口にすればよいわけではありません。

気づくことと、それを伝えることは別です。

気づく。

伝えるかどうかを考える。

伝えるなら、できるだけ評価せずに伝える。

相手の反応も見る。

これもまた、観察なのだと思います。

それでも「見ていない」と言われた

こうして考えると、

「自分は結構見ているんだけどな」

という気持ちもあります(笑)。

でも、そこで終わらずに考えてみました。

もしかすると、

自分が見ている景色と、その人が見ている景色が違うのではないか。

人はそれぞれ、立っている場所が違います。

立っている場所が違えば、見えるものも違います。

自分からよく見えるものもあれば、相手の場所からでなければ見えないものもあります。

そして、自分がその場にいなかった時に起きたことや、自分の知らないところで起きていることは、当然ながら見ることができません。

どれだけ観察力を磨いても、見えないものはあります。

そう考えると、

「見ていない」

という言葉も、

「あなたには見えていない景色がありますよ」

という意味に置き換えて受け取ることができました。

観察したことを「答え」にしない

これはコーチングでも、とても大切なことだと思います。

コーチは、相手を観察します。

表情が変わった。

声が少し小さくなった。

言葉が止まった。

いつもより長い間があった。

同じ言葉が何度も出てくる。

そんな小さな変化に気づくことがあります。

でも、

「表情が変わった。だから、この人はきっとこう思っている」

と決めてしまったら、それは観察ではなく、自分の解釈になってしまいます。

だから例えば、

「今、少し表情が変わったように見えましたが、何かありましたか?」

と尋ねてみる。

自分が観察したものを「答え」にするのではなく、「問い」にするのです。

観察は、相手を決めつけるためではなく、相手をより深く理解するための入口。

20年近くコーチングに関わってきて、これはとても大切なことだと感じています。

同じ道を走っても、見える景色は違う

「らんらんランニング」を思い返すと、これも同じです。

同じ道を二人で走ったとしても、同じ景色が見えているとは限りません。

自分が道端の花を見ている時に、もう一人は空を見ているかもしれません。

自分が面白いと思って写真を撮ったものを、別の人は気にも留めないかもしれません。

反対に、その人が見つけたものを、自分はまったく見落としているかもしれません。

同じ場所にいる。

同じものを見ている。

だから、同じ景色が見えている。

そうとは限らないのです。

人との関係も同じなのでしょう。

立っている場所が違う。

経験してきたことも違う。

関心を向けているものも違う。

だから、同じ出来事の中にいても、それぞれが見ている景色は違います。

「そちらからは、どう見えていますか?」

だとしたら、違う場所にいる人に聞けばいい。

「そちらからは、どう見えていますか?」

コーチングでも、日常の人間関係でも、大切な問いだと思います。

相手の景色を聞くことで、自分には見えていなかったものが加わります。

そして、自分から見えている景色も伝えてみる。

すると、

「そんなふうに見えていたんですね」

と、お互いの景色が少しずつ重なっていくかもしれません。

一人ですべてを見る必要はありません。

むしろ、一人ですべてが見えていると思わないことの方が大切なのかもしれません。

観察力とは「見えないものがある」と知る力

自分はこれまで、観察力とは「小さな変化に気づく力」だと考えてきました。

もちろん、それも大切です。

らんらんランニングで、今まで気づかなかった花を見つける。

人のちょっとした変化に気づく。

コーチングで、表情や声の変化を感じ取る。

でも今回、「見ていない」という言葉をきっかけに、もう一つの観察力があるように思いました。

それは、

「自分には見えていないものがある」と気づく力です。

自分に見えていないものがあると分かれば、尋ねることができます。

見る場所を変えることもできます。

もう一度、観察することもできます。

そして何より、自分が見ている景色だけで相手を判断しなくて済みます。

見る力と、見えていないと知る力

コーチングを学び始めて約20年。

観察力を磨こうとしてきました。

でも、観察力を磨くということは、何でも見える人になることではないのでしょう。

よく見る。

変化に気づく。

でも、自分の見たものだけで決めつけない。

そして、自分には見えない景色があることも忘れない。

考えてみれば、「らんらんランニング」もそうでした。

タイムだけを見ずに、周りの景色を見るから、いろいろなものが見つかりました。

でも、自分が撮った写真が、その日の景色のすべてではありません。

自分が気づかなかった景色も、そこにはたくさんあったはずです。

見る力を磨くほど、「見えていないものがある」と分かる。

それもまた、観察力なのかもしれません。

そして、時には誰かに聞いてみる。

「あなたには、どんな景色が見えていますか?」

その人の答えによって、自分一人では見ることのできなかった景色が、また一つ広がっていくのだと思います。

この言葉が、必要な人に、必要な時に、届きますように・・・

今日も佳き日に
コーチミツル

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