
スピッツの曲に「夢追い虫」という曲があります。
夢追い虫なら良かったのですが、今回、わが家のリンゴの木についていたのは、どうやらそんな可愛らしい虫ではありませんでした。
おがくずを取れば、それでいいと思っていた
昨年から、リンゴの枝におがくずのようなものが付いていることには気づいていました。
何か虫がいるのだろうとは思っていました。
でも自分は、そのおがくずの中に虫がいて、それを取り除けばよいのだと思っていました。
梅の木につくカイガラムシを取るような感覚です。
見つけたら取る。
きれいになったら、それで処置ができている。
そんなふうに考えていました。
今年も同じようなものが出てきたので、いつものように取り除いていました。
ところが、作業をしながら、ふとリンゴの木の根元に目を向けた時のことです。
ある記憶が突然よみがえってきました。
根元を見て、4年前のオリーブを思い出した
家の裏には、以前から、草だらけになっている休耕地があります。
そこを8年前に1回きれいにして町内会のみんなで、バーベキューをしたことがありました。
その時に記念に植えたのが、一本のオリーブの木でした。
その場所のシンボルツリーのような存在で、少しずつ成長し、2メートルほどまで育っていました。
ところが、4年ほど前の夏前。
それまで緑だった葉が、だんだん茶色くなっていきました。
「おかしいな」
と思って根元を見ると、そこにはおがくずのようなものがたくさん出ていました。
そして見つけたのが、オリーブアナアキゾウムシでした。
気づいてから虫を取り除きラップをして回復を待ちました。
でも、遅かったんだと思います。
2メートルほどまで育ったオリーブに、緑の葉が戻ることは二度とありませんでした。
「待てよ、あの時もおがくずだった」
今回、リンゴの木の根元を見た時に、そのオリーブのことを思い出しました。
「あの時も、おがくずのようなものが出ていた」
そこで初めて、
「もしかしたら、このおがくずを取るだけではダメなのでは?」
と思ったのです。
不思議なものです。
昨年から、自分はおがくずを見ていました。
今年も見ていました。
でも今回は、木の根元まで目を向けて観察したことで、4年前の経験と目の前の出来事がつながりました。
見ることと、観察すること。
似ているようで、少し違うのかもしれません。
おがくずは「結果」だった
そこでおがくずの部分の写真を撮り、AIのはるさんに聞いてみました。
すると、自分がおがくずだと思って取り除いていたものは、単にそこに虫がいるということではなく、木の内部に入り込んだ虫が食害した結果として、外へ出てきたものではないかということが分かりました。
つまり、おがくずを取って終わりではありません。
問題は、その奥にあるかもしれないのです。
そこで、被害の大きそうな枝を切り、樹皮の内側も調べてみました。
驚きました。
外から見えていた以上に、細く深く食べられていました。

そして中から、小さなオレンジ色の幼虫も出てきました。

リンゴにはヒメボクトウなど、幹や枝の内部に入り込んで食害する虫がいます。
今回見つけた幼虫が何の虫なのかは断定できませんが、少なくとも、自分がこれまで取り除いていたおがくずは、木の中で何かが起きているサインだったわけです。
「奇跡のリンゴ」を夢見て
実は、このリンゴの木には、自分なりの小さな夢があります。
木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」に憧れて、これまで無農薬・無肥料で育ててきました♪
もちろん、自分はリンゴ農家ではありませんし、木村さんと同じことができるなどとは思っていません。
ただ、できるだけ自然の力で育ってほしい。
そして、いつかこの木になったリンゴを食べてみたい。
そんなことを楽しみにしてきました。
今年の春、そのリンゴの木に初めて花が咲きました。
たった一輪。
でも、その一輪が、とても嬉しかったのです。
木村秋則さんも、長い苦労の末に一本の「ふじ」にわずか7つの花が咲き、そこから実を結ぶリンゴが現れたと伝えられています。
そう考えると、
「自分のリンゴも一輪から始まるのかもしれない」
なんて思っていました。
いつの日か、この一輪の先にリンゴが実る。
そんな未来を楽しみにしていたのです。
無農薬を守るのか、リンゴの木を守るのか
だからこそ、今回迷いました。
できれば薬は使いたくありません。
せっかく「奇跡のリンゴ」を目指して、無農薬・無肥料で育ててきた木です。
できることなら、そのまま育てたい。
けれど、枝を切って中を見てみると、虫は想像していた以上に深く入り込んでいました。
しかも一匹ではありません。
あちこちの枝に多数の食害の跡がありました。
そこで、4年前のオリーブがもう一度頭に浮かびました。
あの時も、気づいてから手当てをしました。
でも間に合いませんでした。
このまま何もしなければ、オリーブの二の舞になるかもしれない。
そこで考えました。
自分が本当に大切にしたかったのは、
「農薬を使わないこと」なのか。
それとも、
「このリンゴの木を生かすこと」なのか。
答えは後者でした。
無農薬は目的ではなく、この木をできるだけ自然に、元気に育てるために選んできた方法です。
方法を守ることによって木そのものを失ってしまったら、本末転倒です。
今回は、木を生かすための処置をすることにしました。
長いノズルが物語っていたもの
ホームセンターで見つけたのが「園芸用キンチョールE」でした。

手に取って驚いたのが、付属している長いノズルです。
木に開いた穴の奥へ差し込み、内部にいる害虫に届かせるためのものです。
その長いノズルを見ながら、
「こんなに深いところまで虫は入っていくのか」
と思いました。
実際に枝を切って中を見た後だったので、その長さにも納得しました。
できれば使いたくなかった薬です。
それでも今回は、一輪の花を咲かせてくれたこの木を生かすために使うことにしました。
「見る」と「観察する」は違う
今回の出来事を振り返って、一番心に残ったのは「観察する」ということです。
リンゴの木は、去年からサインを出していました。
自分も、それを見ていました。
でも、
「おがくずがあるから取ろう」
で終わっていました。
今回は、ふと根元まで目を向けた。
すると4年前のオリーブの記憶がよみがえりました。
過去の経験があったから気づいた。
でも、経験があるだけでは気づかなかった。
観察したことで、過去と現在がつながったのです。
これは木に限った話ではないような気がします。
人も、仕事も、自分自身の心や身体も、いろいろなサインを出しています。
ただ見ているだけでは、その意味に気づかないことがあります。
「いつもと何か違うな」
「これは何を知らせているんだろう」
そんなふうに少し立ち止まって観察する。
そこから、以前の経験が意味を持ち始めることがあります。
4年前の失敗も、スパイラルの途中だった
自分はWell-Being Spiralというものを考えています。
人生は、一直線に右肩上がりで進んでいくわけではありません。
うまくいったり、失敗したり、立ち止まったり、時には以前と同じようなところへ戻ってきたりします。
今回もそうでした。
4年前、おがくずの出たオリーブの木を前にしました。
そして、救うことができませんでした。
数年後、今度はおがくずの出たリンゴの木を前にしています。
同じところに戻ってきたようにも見えます。
でも、まったく同じではありません。
4年前の経験を持った自分がいます。
根元を観察して、
思い出して、
調べて、
木の中で起きている現実を受け入れて、
そして行動しました。
失敗して、戻って、気づいて、また動く。
同じところをぐるぐる回っているように見えても、以前の経験を持った自分は、少し違うところに立っています。
それがスパイラルなのだと思います。
ぶれないとは、方法を変えないことではない
今回、「無農薬で育てる」という自分の方針を変えました。
一見すると、ぶれたようにも見えます。
でも、自分が本当に大切にしたかったのは、
「絶対に農薬を使わない」
ということではありませんでした。
「このリンゴの木を大切に育てたい」
こちらが自分の戻る場所でした。
方法は変わっても、大切にしたいものまで変わったわけではありません。
むしろ、目の前の現実を受け入れたからこそ、本当に大切にしたかったものに戻ることができたのかもしれません。
これも自分にとっては、Well-Being Spiralです。
また一輪から
薬を使ったからといって、これで終わりではありません。
これからも木を観察して、おがくずが新しく出ていないか、枝が弱っていないかを見ていこうと思います。
すぐに結果が出るわけでもありません。
できることをして、あとは木の力を信じて待つ。
来年、また一輪でも花が咲いてくれたら嬉しい。
二輪になったら、もっと嬉しい。
そして、いつの日か、その花の先に一個のリンゴが実ったら――。
4年前に枯れてしまったオリーブにも、
「今度は間に合ったよ」
と報告したいと思います。
夢追い虫なら良かったけれど。
今回出会ったのは、なかなか手強い虫でした。
でも、その虫がきっかけとなって、4年前の失敗と今がつながりました。
失敗して、戻って、観察して、気づいて、また動く。
失敗も、迷いも、立ち止まる時間も、あとから振り返ればスパイラルの一部なのかもしれません。
そして、そのスパイラルの先に、
いつの日か一個のリンゴが実ることを、楽しみにしています。
この言葉が、必要な人に、必要な時に、届きますように・・・
今日も佳き日に
コーチミツル

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