
いつから下を向くようになったのだろう
最近、ふと思うことがあります。
自分は、ずいぶん長い時間スマートフォンを見ているのではないだろうか。
何かを調べる。
メッセージを確認する。
ニュースを見る。
SNSを開く。
どれも特別なことではなく、日常の一部になっています。
そして気がつくと、またスマートフォンを手にしています。
そんなとき、ある疑問が浮かびました。
スマートフォンがなかったころ、自分はこの時間に何をしていたのだろう。
ところが、すぐには答えが浮かびませんでした。
スマートフォンがなかったころ
読書をしていたのかもしれません。
音楽を聴いていたのかもしれません。
誰かと話をしていたのかもしれません。
あるいは、何もせず、ぼんやりと過ごしていたのかもしれません。
昔の生活が、今より必ず豊かだったとは思いません。
スマートフォンのおかげで便利になったことは数え切れないほどあります。
遠くの人と簡単に連絡が取れ、知りたい情報もすぐに見つかります。
自分もブログや情報収集などで、日々その恩恵を受けています。
だから、スマートフォンそのものが悪いと言いたいわけではありません。
ただ、便利になったことで、何かが変わったのではないかと感じるのです。
顔を上げると見えるもの
スマートフォンを見るとき、自分たちの視線は自然と下を向きます。
歩いているときも、電車を待っているときも、ちょっとした空き時間にも。
画面の中には、次々と新しい情報が現れます。
一方で、目の前にある景色には気づかなくなることがあります。
道端に咲く花。
季節によって変わる空の色。
木々の葉の揺れ。
すれ違う人の表情。
画面に意識を向けている間も、現実の世界は動き続けています。
歩きながらスマートフォンを操作することには、安全面の問題もあります。
でも、それだけではありません。
顔を上げなければ出会えないものが、日常にはたくさんある。
そう感じるようになりました。
大好きな「上を向いて歩こう」
坂本九さんの「上を向いて歩こう」は、自分が大好きな曲の一つです。
実は、ジャズセッションでも演奏しています。
師匠にお願いしてジャズアレンジをしていただき、トランペットで演奏する大切なレパートリーになっています。
そして先日、思いがけない出来事がありました。
Zoomで参加していた勉強会の最後に、みんなで歌を歌うことになったのです。
その曲が、偶然にも「上を向いて歩こう」でした。
自分には、以前作っていただいたカラオケの音源がありました。
そこで、その音源を流して、みんなで歌うことができたのです。
まさか、ジャズセッションで演奏している大好きな曲が、勉強会でも役に立つとは思いませんでした。
音楽は、こうして思いがけない場面で人と人をつないでくれることがあります。
そして、この曲を歌ったことが、今の自分の生活を振り返るきっかけにもなりました。
絵を描くと、世界の見え方が変わる
以前、絵を描くことについて考えたことがあります。
目の前に山があれば、普段は「あそこに山がある」と見るだけかもしれません。
しかし、絵に描こうとすると、見え方が変わります。
山にはさまざまな木があり、その木には一枚一枚の葉があります。
同じ緑色に見えていた葉にも、光や影によって微妙な色の違いがあります。
絵の技術があるかどうかは関係ありません。
描こうとすることで、これまで見過ごしていたものに気づくのです。
目の前のものを、ただ見るのではなく、じっくり味わう。
そんな時間が、いつの間にか少なくなっているのかもしれません。
音楽は変わらない
そんな中で、自分には変わらずに続けていることがあります。
それが音楽です。
トランペットを吹いているとき、自分は演奏に集中しています。
息の流れ。
音の響き。
仲間の演奏。
そして、自分が出そうとしている音。
その瞬間、スマートフォンのことを考える余裕はありません。
音楽を演奏すること、練習すること、そして人前で発表すること。
こうした音楽の楽しみ方は、自分にとって昔も今も大きく変わっていません。
音楽に没頭している時間は、目の前の一つのことを深く味わう時間です。
今になって、そんな時間を持てていることをありがたく感じています。
情報を得ることと、体験を味わうこと
スマートフォンで美しい景色を見ることはできます。
素晴らしい演奏を聴くこともできます。
遠くの町の様子を知ることもできます。
しかし、情報として知ることと、実際にその場で体験することは、少し違います。
風を感じる。
夕日が沈むまでの時間を過ごす。
楽器の音が空間に響くのを感じる。
誰かと顔を合わせて話す。
こうした体験には、画面から得られる情報とは違った豊かさがあります。
どちらか一方を選ぶ必要はありません。
ただ、情報を得ることに時間を使いすぎて、目の前の体験を味わう時間が少なくなっていないか。
そこは、自分自身に問いかけておきたいと思います。
もう一つの「上を向いて歩こう」
大好きな曲を、ジャズセッションで演奏する。
そして、思いがけず勉強会でみんなと歌う。
そんな経験を通して、改めて「上を向いて歩こう」という言葉を考えました。
もちろん、この歌はスマートフォンの使い方について歌ったものではありません。
けれども、今の自分には、この言葉がもう一つの意味を持って響いてきます。
下を向いて画面を見続けるのではなく、顔を上げて、目の前の世界に目を向ける。
いつも上を向いている必要はありません。
大切なのは、意識をどこに向けるかを、自分で選べることなのだと思います。
スマートフォンに使われるのではなく、自分が必要なときに使う。
そして、手放した時間には、目の前にあるものを味わってみる。
見慣れた景色も、少し違って見えるかもしれません。
今ある時間を大切に味わうこと。
そんな小さな習慣が、日々の豊かさにつながっていくように思います。
大好きな「上を向いて歩こう」を、これからも演奏し、歌い続けながら。
スマートフォンの画面から少し顔を上げた先にある、小さな美しさや喜びが、誰かの心に届きますように。
今日も佳き日に
コーチミツル
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