566.【食べものを選ぶということ③】きれいな野菜の向こう側(生産者の健康と、私たちの選択)

前回、農薬の残留基準について調べました。

調べてみると、農薬を使って育てられた野菜が、すぐに危険というわけではありませんでした。

基準の範囲内であれば、普通に食べるうえで健康への影響が出ないように管理されています。

では、農薬を使わずに野菜を育てる意味は、どこにあるのでしょうか。

食べる人の安心だけではありません。

農薬を使わないことは、野菜を育てる生産者自身が農薬に触れる機会を減らすことにもつながります。

食べる人と、散布する人

自分たち消費者が食品から摂る可能性があるのは、基準の範囲内に管理された微量の残留農薬です。

一方、生産者は、農薬を調合したり、散布したり、器具を洗ったりします。

使い方によっては、皮膚、目、呼吸器などから、農薬に直接触れる可能性があります。

その意味では、農薬を使わない自然栽培は、生産者自身の農薬への曝露を避ける方法の一つだと思います。

自分も農薬を使わないため、薬剤を調合したり、散布時の風向きを気にしたり、薬剤を保管したりする必要はありません。

これは、自然栽培のよさの一つだと思います。

健康と引き換えに、きれいな野菜を作っているのか

では、農薬を使う生産者は、自分の健康と引き換えに、きれいな野菜を作っているのでしょうか。

それは、少し違うと思います。

農薬には、使用できる作物、希釈倍率、散布量、使用回数、収穫までの日数などの決まりがあります。

使用するときには、防護具を着け、ラベルの指示を守り、周囲へ飛び散らないようにする必要があります。

つまり、生産者は、何も考えずに農薬を使っているわけではありません。

リスクを管理しながら適切に使っています。

ただ、食べる人より、農薬に直接触れる可能性が高いことは確かです。

そのため、農薬を使わないことは、消費者だけでなく、生産者自身の健康を守る一つの選択とも言えるのでしょう。

農薬は、見た目のためだけではない

農薬は、野菜をきれいに見せるためだけに使われているわけではありません。

病気や害虫から作物を守る。

収穫量を安定させる。

一定の価格で、多くの人に届ける。

農家の経営を守る。

そうした役割、目的があります。

農薬を使わなければ、病害虫によって、ほとんど収穫できなくなることもあります。(自分がこれです(笑))

一方で、自分たち消費者が、穴のない、形の整った野菜を強く求めることで、生産者の防除や選別の負担が増えている面もあると思います。

自分の家族も、虫食いのない、きれいな野菜を好みます。

それを責めるつもりはありません。

虫が苦手な人に、

「自然なのだから我慢して食べなさい」

と言っても、楽しい食事にはならないでしょう。

自然栽培にも、別の負担がある

農薬を使わなければ、すべてが楽になるわけではありません。

防虫ネットをかける。

虫を一匹ずつ取る。

草をこまめに刈る。

病気が広がらないように管理する。

そのように丁寧に育てている人もいます。

ただ、自分は、そこまで小まめに管理するタイプではありません。

どちらかというと、おおざっぱです。

防虫ネットもかけず、雑草の中で育つ野菜を、ときどき見ながら育てています。

そのため、草が増えることも、虫に食べられることも、収穫できないことも含めて受け入れています。

農薬を使わない代わりに、自然の中で起こることを、ある程度そのまま引き受けているのだと思います。

慣行栽培、減農薬栽培、有機栽培、自然栽培。

どれか一つだけが正しく、ほかが間違っているわけではありません。

それぞれに、目的、事情、よさ、負担があります。

虫食い野菜を選ぶということ

虫食い野菜を選ぶことは、単に見た目の悪い野菜を我慢して買うことではありません。

不ぞろいや小さな穴を受け入れることで、農薬を減らしたい生産者や、自然に近い方法で育てたい生産者を支えることにもつながります。

一方で、形の整った野菜を選ぶことも間違いではありません。

料理のしやすさ、保存性、価格、家族の好み。

食べものを選ぶ理由は、人によって違います。

大切なのは、

「穴が開いているから安全」
「きれいだから危険」
「無農薬だから絶対によい」
「基準内だから、何も考えなくてよい」

と単純に決めないことだと思います。

野菜の向こう側にいる人

自分が育てたルッコラには、虫食いの穴がありました。

サラダを作ろうとしたら、ダンゴムシも落ちてきました。

自分は、

「いたか」

と思って庭へ返しましたが、家族なら叫んでいたでしょう。(笑)

同じ野菜を見ても、感じ方は人によって違います。

だから、全員が同じものを選ぶ必要はありません。

ただ、野菜の向こう側には、それを育てた人がいます。

農薬を使う人は、病害虫を防ぎ、安定して届けるために、使用基準や安全管理を守っています。

農薬を使わない人は、虫食いや不ぞろい、収穫量の不安定さと向き合っています。

自分のように、細かく管理するのではなく、ある程度自然に任せて育てている人もいます。

その背景を少し知るだけで、野菜の見え方は変わります。

見た目だけで決めず、価格だけでも決めず、自分が何を大切にしたいのかを考えて選ぶ。

そして、ときには、少しくらい穴の開いた野菜も手に取ってみる。

それが、生産者と消費者の双方にとって、少しやさしい選択になるのかもしれません。

この記事が、野菜の見た目だけでなく、その向こう側にいる生産者にも思いを向け、自分らしい食べものの選び方を考えるきっかけとして、必要な人に届きますように。

今日も佳き日に

コーチミツル


引用・参考資料

WHO
「Pesticide residues in food」

WHO
「Preventing health risks from the use of pesticides in agriculture」

農林水産省
「農薬使用者安全評価部会」

農林水産省
「農薬の適正な使用」

農林水産省
「農薬危害防止運動」

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