257.講師にとってのプレゼンスとは? (アイコンタクトの力と「分かりやすさ」の工夫)

プレゼンスという言葉の意味

 十数年前、広島で開催されたセミナーコンテストに出場したことがあります。その時の成績は、7人中5位と言う輝かしい??ものでしたが、その後経験を重ね、講師として人前に立つとき、テクニカル的なものもさることながら大切になるのが「プレゼンス」ではないかと感じています。
そこで、辞書的に調べてみましたが、単なる存在感を超えて「人を惹きつける力」と定義されているようです。

  • Cambridge Dictionary“a quality that makes people notice or admire you, even when you are not speaking”
    (話していないときにも人に注目されたり賞賛されたりする資質)
  • Collins Dictionary“the ability to project a sense of ease, poise, or self-assurance, esp. the quality or manner of a person’s bearing before an audience.”
    (聴衆の前で落ち着きや自信を湛えた佇まいを示す能力)
  • Wikipedia(Social Presence Theory):非言語的な親密さや即時性(アイコンタクト・表情・姿勢など)が「社会的プレゼンス」を高めるとされています。

つまりプレゼンスとは、声・姿勢・表情・まなざしを通じて、聴き手に安心感や説得力を届ける力だと考えています。


講師のプレゼンスを支える主な10の要素

  1. 声の届き方 ― 響きや抑揚、間の取り方。大声ではなく耳に届く声が大切。
  2. 姿勢と立ち居振る舞い ― 背筋の伸び、落ち着いた立ち方。
  3. 表情の柔らかさ ― 安心感や親近感を与える笑顔やまなざし。
  4. わかりやすさ ― 論理の整理に加え、自分の経験を交えて伝えること。
  5. 安心感と信頼感 ― 質問や間違いを受け止める空気。
  6. アイコンタクト ― 相手とのつながりを直接感じさせる視線。
  7. 柔軟な対応力(即興性) ― 場の空気を読み取り、臨機応変に切り替える力。
  8. 熱意と情熱 ― 「なぜこれを伝えたいのか」という思いの強さ。
  9. 間(沈黙)の使い方 ― 話さない瞬間が理解や余韻を生み出す。
  10. 一貫性と誠実さ ― 言葉と行動が一致していること。

これらが重なり合うことで「この人の話には力がある」と感じてもらえるのだと思います。


自分は苦手だけど大切な要素:アイコンタクト

自分にとって特に難しいのが、このアイコンタクトです。
元来恥ずかしがり屋なので、映画のワンシーンのように相手の目を見て話すのが苦手で、1対1のときはどうしてもあごや鼻あたりを見てしまうことが多いのです。

ところが、ある90分間のセミナーで出会った講師の方は違いました。
その方が話す最中に、自分の目を数秒しっかりと見て語りかけられた瞬間がありました。胸にまっすぐ言葉が届いたように感じ、その説得力に強く心を動かされたのです。数十人いる中で2人だけで話しているような錯覚も感じたほどです。
そのとき「自分がそう感じたのだから、他の参加者も一人ひとりしっかり目を見られていたのだろう」と想像しました。

この体験から、アイコンタクトは単なる技術ではなく、聴き手との信頼を築き、言葉を心に響かせる力だと実感しました。


アイコンタクトの効果とエビデンス

研究でも、アイコンタクトが学習者の理解や集中を高めることが示されています。

  • **千葉県教育委員会の報告書(2012)**では、アイコンタクトを取りながら授業を進めた結果、生徒が「授業が楽しい」「先生との距離が縮まった」と感じ、積極的な発言や参加が増えたとされています。
  • 心理学の研究でも、アイコンタクトは情報の保持や再生に良い影響を与え、学習効率を高めることが指摘されています。

つまりアイコンタクトは、理解度や集中度を上げ、学習意欲を引き出す重要な要素なのです。


自然なアイコンタクトを身につける練習法

自分もまだ完全にできているわけではありませんが、少しずつ実践・修行しています。

  • 「目 → 鼻 → 目」と視線を移す:直視し続けなくても自然さを保つことができます。
  • 3〜5秒ルール:一人につき短い時間だけ視線を合わせる。
  • 鏡に向かって話す:自分の目に慣れる練習。
  • 動画で確認する:視線の動きを客観的に把握。

大切なのは「にらむ」のではなく、安心感を与えるまなざしを意識することです。


まとめ

  • プレゼンスは「声・姿勢・表情・アイコンタクト」だけでなく、主な10の要素が重なり合って生まれる力
  • 「分かりやすさ」を高めるには、自分の経験を交えることで共感を育むことが効果的。
  • アイコンタクトは苦手でも、聴き手の理解・集中・意欲を高める研究結果があり、講師のプレゼンスを大きく支える。
  • 練習を重ねることで、自然で安心感のあるアイコンタクトは少しずつ身についていく。

問いかけ

あなたが聴衆として人の話を聴いたとき、「この人の言葉には力がある」と感じたのはどんな瞬間でしたか?
その中に、声やまなざし、間の取り方など、プレゼンスのヒントが隠れているのかもしれません。

今日も佳き日に

コーチミツル


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