
前回、「口呼吸」がカラダの防御を弱め、感染や高熱につながるというお話を書きました。
口は本来“空気の入口”ではなく、“食べ物の通り道”。
そこを空気の通り道にしてしまうことで、のどの粘膜が乾き、ウイルスや菌が侵入しやすくなることがあります。
けれど、今回の話はまったく逆。
カラダが「守りすぎた結果」、自分自身を傷つけてしまったという出来事です。
高熱、倦怠感、そして肝臓の検査値の急激な悪化――
それは「治療」だと思っていたことが、実は自分のカラダにとっては負担になっていたと気づかされた出来事でした。
繰り返す高熱に、違和感はありました
私はもともとモノ食いが悪く、幼稚園のころは「栄養失調」と言われるほどガリガリでした。
高熱が出やすく、ちょっとした行事のあとには、40度近い熱が1週間ほど続くこともよくありました。
それは大人になってからも変わりませんでした。
入社1週間後の発熱、膝の手術後の高熱、そして会社の決算処理が終わったあと…。
緊張や行事の後、ホッとしたタイミングで、決まって高熱にうなされていたのです。
治療をしているのに、なぜか悪化するカラダ
あるとき、会社の歓迎会でお酒を飲んだ2日後に、またもや高熱が出ました。
その時期は重要な業務を控えていたため、すぐに病院へ行き、抗生物質の点滴治療が始まりました。
ところが、何日経っても熱は下がらず、ついには入院することになりました。

精密検査を受けても、感染症の兆候は見つかりません。
けれど、血液検査の結果に、私は愕然としました。
肝臓の数値が、これまでにないほど悪化していたのです。
セフェム系抗生物質が引き起こしていた“薬剤熱”と“肝障害”
医師からは、こう告げられました。
「セフェム系抗生物質が原因の薬剤熱かもしれません」
「加えて、薬剤による肝機能障害の疑いもあります」
セフェム系抗生物質は、風邪や術後の感染予防などで広く使われているお薬です。
しかし私の場合、それを“異物”とみなしたカラダの免疫が、過剰に反応してしまったようでした。
つまり、感染を防ぐための薬が、かえってカラダの中で火を起こしてしまったということです。
「薬剤熱」と「薬剤性肝障害」とは?
▷ 薬剤熱(drug fever)とは
薬剤熱とは、薬に対して免疫が過剰反応を起こし、発熱する状態を指します。
- 38~40度以上の高熱が続く
- 感染の証拠がない
- 原因となる薬を止めると、熱が下がる
▷ 薬剤性肝障害(DILI)とは
薬が肝臓で代謝される過程で、毒性が強く出てしまい、肝細胞が傷つく状態を指します。
- AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が急上昇
- 自覚症状が少ないこともあるが、進行すると倦怠感、黄疸なども出る
日本化学療法学会や日本肝臓学会でも、セフェム系抗生物質はこの2つの副作用を引き起こすリスクがある薬剤群として位置づけられています。
守るはずの免疫が、暴走していた
このときの自分のカラダは、まさに「自分を守るための暴走状態」だったのだと思います。
外敵を排除しようと、免疫がフル稼働していた。
けれど、その過剰な働きが、味方であるはずの薬にすら攻撃を仕掛けてしまったのです。
まるで、何かに怯えて過剰に反応してしまう神経と、よく似ています。
防御本能は、生きていくうえで欠かせない大切なもの。
でも、それが強すぎると、自分自身をも苦しめてしまうことがあるのだと、痛感しました。
口呼吸とのつながり――「過剰防御」と「無防備」の間で
前回お伝えした「口呼吸」は、防御が足りない状態。
ウイルスや菌に対して無防備になり、風邪や発熱につながることがある、という話でした。
そして今回の話は、防御しすぎた結果、自分を攻撃してしまうという真逆のケース。
どちらも、免疫のバランスが崩れていたという点では同じなのだと思います。
「弱すぎても苦しい」
「強すぎても苦しい」
だからこそ、“ちょうどいい”免疫の働き方がいかに大切かに、あらためて気づかされました。
カラダは、ちゃんと教えてくれていた
高熱が出たのも、
肝臓の数値が急激に悪化したのも、それはカラダが「今、無理してるよ」と知らせてくれていたサインだったのかもしれません。
けれど私は、それに気づかず「治すため」と信じて薬を飲み続け、結果として、より深くカラダを傷つけてしまっていました。
“治す”ことは、時に“やめる”ことでもある
薬はありがたい存在です。
けれど、誰にとっても万能というわけではありません。
「この薬は自分に合っているのか?」
「いま本当に必要なのか?」
そんな問いを、カラダと一緒に考えることがとても大切だと感じています。
治すということは、時に“やめる”ことでもあるのです。
結びにかえて
カラダは、見えないところで毎日、私たちを守ってくれています。
けれど、その守りが強すぎたり、方向が違ったりすると、知らないうちに自分自身を傷つけてしまうこともあります。
これからは、薬だけに頼るのではなく、自分のカラダの声にもっと耳を澄ませながら、“ちょうどいい免疫バランス”を大切にしていきたいと思います。
今日も佳き日に
コーチミツル
参考文献
- 日本化学療法学会雑誌「薬剤熱に関する最近の知見」2023年
- 日本肝臓学会ガイドライン(薬剤性肝障害の診断基準)2023年
- UpToDate: “Drug fever and drug-induced liver injury”, 2024年版
- Medscape Clinical Update 2023年
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