「あの人はダイヤの原石だね」
そんなふうに言われる人がいます。まだ表に現れていない魅力や才能を秘めた人のことを、私たちは“原石”と呼びます。
私は、コーチとして誰しもが何かしらの原石を内に持っていると思っています。
それは、ダイヤモンドのように硬く光る石かもしれないし、ルビーのように情熱的な輝きを放つ石かもしれません。あるいは、黒曜石(こくようせき)のように鋭さを秘めていたり、翡翠(ひすい)のように柔らかで静かな美しさを持っているかもしれません。
けれどもその石は、掘り出されただけでは全く光りません。
その素材を見極め、形を整え、磨いていくことで、はじめて光を放ちはじめるのです。
原石を見つけるという第一歩
自分を磨くには、まず「自分は何の原石なのか?」を知ることが大切だと思うんです。
素材によって、活かし方は大きく異なります。たとえば黒曜石(こくようせき)は、宝飾品としてよりも、刃物などの実用品に適した特性を持っています。
翡翠(ひすい)は、加工を重ねて独特の輝きを放つ優しいながらチカラ強い石。
つまり、自分にとっての“強み”や“本質”を見つけることが、磨くというプロセスのスタート地点なのです。
心理学者マーティン・セリグマンの研究によれば、「自分の強みに気づき、それを活かす生き方をする人ほど、幸福度(well-being)が高い」とされています(Seligman, 2011)。
自分の素材を理解し、そのままを活かすことが、自分らしく豊かに生きることにつながっていくのだと思うのです。
磨くという行為
私の生まれた所の近くには「玉造(たまつくり)」という温泉が湧き出る素敵な観光地があります。
かつてそこでは、翡翠(ひすい)や瑪瑙(めのう)などの石を丁寧に削り、磨き、勾玉(まがたま)として宝飾品という形にしていました。
それは、素材の個性を見極め、その美しさを引き出すという文化の表れでもあります。
ところで、現代において「磨く」という行為は、さまざまな形を取るように思うんです。
本を読む、体力をつける、歌の練習をする、誰かの話を真剣に聞く、知識を深める、丁寧に生活する。
これらがすべてではありませんが、自分自身を磨く行為は、ありとあらゆるところにあると思います。
私自身も、日々筋トレをしたり、トランペットの練習を重ねたり、こうやった毎日ブログを書いたり、朗読したりしています。
実は自分でも何のためにやっているのか、はっきりと分かりませんが、それでも「昨日より少し進化した自分」、「少し研ぎ澄まされた自分」に近づいている感覚は確かにあります。
磨き続けた先にあるもの
磨かれた石は、単に美しいだけではなく、誰かに力を与えたり、護符のように大切にされる存在になります。
人も同じように、自分を磨き続けた先には、自信や魅力、そして周囲への良い影響力が育まれていくのではないでしょうか。
心理学者キャロル・ドゥエックの提唱する「成長マインドセット」の考え方にもあるように、
能力は生まれつき決まっているのではなく、努力と学びの積み重ねによって伸ばしていけるものです(Dweck, 2006)。
日々の小さな実践が、未来の自分を形作る。
自分を磨くことは、決して派手なことではなく、地道で静かな作業かもしれません。
けれど、確実に輝きは増していきます。
自分が何の原石か分からないときは
「自分には何が向いているのか分からない」
「どんな素材を持っているか、見つけられない」
そんなふうに感じることもあるかもしれません。
そんなときは、信頼できる誰かと対話してみるのも一つの方法です。
なかでも、コーチングを受けることは、自分の内面と向き合い、自分の可能性を言語化する有効な鍵のひとつです。
コーチとの対話を通して、自分では見えていなかった原石の輝きが浮かび上がってくることがあります。
自分自身の素材を見つけ、その磨き方を探す旅に、プロフェッショナルのサポートが加わることで、きっと一歩踏み出しやすくなるはずです。
人は生まれた時から間違いなく
皆、何かしらの原石を持っていると思うんです。
それは誰かと比べるものではなく、自分だけの特別な素材です。
自分の素材を知り、丁寧に磨いていくことで、
自分の人生が少しずつ輝きを増していく。
今日もまた、その一歩を積み重ねていきましょう。
今日も佳き日に
コーチミツル