683.なぜ人は、他人の行動を否定するのか ―「無駄だ」の向こう側

頑張っている人に向けられる言葉

誰かが一生懸命に取り組んでいることに対して、

「そんなことをしても無駄だよ」

「時間がかかりすぎる」

「そこまでする必要があるの?」

と、否定的な言葉を投げかける人がおられます。

もちろん、改善のための意見や助言は大切です。

しかし、本人が何かを求めたわけでもないのに、あえて否定的なことを口にする。

そんな場面に出会うと、なぜわざわざ言うのだろうと考えることがあります。

その行動は、本当に無駄なのか

たとえば、ある人が、時間をかけて丁寧にお客さまに対応していたとします。

それを見て、

「そんなに時間をかける必要はない」

「もっと効率よくすればいいのに」

と言う人がいるかもしれません。

確かに、仕事において効率は大切です。

限られた時間の中で成果を出すことも必要でしょう。

しかし、その丁寧な対応によって、お客さまが安心したり、信頼関係が生まれたりすることもあります。

一見、時間がかかっているように見える行動が、実は長い目で見れば、大きな価値を生んでいるかもしれません。

何をもって無駄とするのか。

それは、どこに価値を置くかによって変わってくるのだと思います。

効率を重視する人には無駄に見えても、相手への心遣いを大切にする人にとっては、欠かせない時間なのかもしれません。

否定することによって何かメリットがある?

では、なぜ人は他人の行動を否定するのでしょうか。

一つの可能性として、自分自身の考え方や行動を正当化したいという心理があるのではないかと感じています。

たとえば、自分が時間をかけずに仕事を進めているとき、誰かが丁寧に時間をかけて対応している。

その姿を見て、無意識のうちに自分のやり方と比較しているのかもしれません。

そして、

「あそこまでする必要はない」

と評価することで、自分のやり方は間違っていないと確認している可能性もあります。

心理学には、自分の考えや行動を正しいものとして説明しようとする「正当化」という考え方があります。

ただし、否定的な発言の理由が、すべて自己正当化とは限りません。

本当に心配している場合もあれば、過去の経験から助言している場合もあるでしょう。

大切なのは、相手の発言の背景を決めつけないことだと思います。

自分の物差しで他人を測っていないか

人にはそれぞれ、大切にしている価値観があります。

速さを大切にする人。

正確さを大切にする人。

結果を大切にする人。

そして、人との関係や、その過程を大切にする人。

どれか一つだけが正しいというわけではありません。

ところが、自分の価値観を唯一の基準にしてしまうと、違うやり方をする人が間違っているように見えてしまいます。

「自分ならそんなことはしない」

という考えが、

「そんなことをするのはおかしい」

に変わってしまうこともあるのでしょう。

しかし、自分が選ばない方法だからといって、それが無意味だとは限りません。

自分にとっての正解が、相手にとっての正解とは限らない。

このことも忘れないようにしたいと思います。

否定的な言葉にどう向き合うか

では、自分が否定的な言葉を向けられたとき、どうすればよいのでしょうか。

以前自分は、そうした言葉に対して、何とか理解してもらおうと説明したくなることもありました。

しかし、相手の考えを無理に変えようとすると、かえって対立してしまうこともあります。

そこで、まず考えたいのは、

「その人は、何を大切にしてそう言っているのだろう?」

ということです。

効率を大切にしているのか。

失敗を心配しているのか。

自分とは違う経験をしてきたのか。

その背景を想像することで、言葉の受け止め方も変わってくるかもしれません。

ただし、理解しようとすることと、すべてを受け入れることは同じではありません。

相手の意見を理解したうえで、自分が大切にしたいことを選んでもよいのです。

「そういう考え方もありますね」

と受け止めながら、

「自分は、ここに価値があると考えています」

と伝える。

相手を否定せず、自分の価値観も手放さない。

そんな向き合い方ができればと思います。

言葉の向こうにあるもの

自分が考えているWell-Being Spiralでは、自分の内側にある思いや意志を「Inner Will」として大切にしています。

人が何かに取り組むとき、その行動の背景には、目には見えない思いがあることも少なくありません。

なぜ、その人は時間をかけているのか。

なぜ、そこまで丁寧にするのか。

なぜ、それを続けたいのか。

外から見える行動だけで判断するのではなく、その人が何を大切にしているのかに関心を向ける。

それは、前回の『星の王子さま』で考えた「相手の興味に興味を持つ」ということにもつながります。

「無駄だ」と感じる行動の中に、その人にとっての大切な意味が隠れているかもしれません。

誰かの可能性を狭める言葉よりも

自分自身も、知らず知らずのうちに誰かの行動を評価したり、自分の価値観で判断したりしていることがあると思います。

だからこそ、誰かの取り組みを見たときには、すぐに良し悪しを決めるのではなく、

「なぜ、それを大切にしているのだろう?」

と、少し立ち止まって考えてみたいものです。

もちろん、問題があるときには指摘することも必要です。

否定的な意見そのものが悪いわけではありません。

大切なのは、相手を理解しようとする姿勢があるかどうか。

同じ内容を伝えるにしても、

「そんなことをしても無駄だ」

と言うのと、

「どんな思いがあって、そうしているの?」

と尋ねるのでは、そこから生まれる関係も可能性も違ってくるはずです。

人を評価する前に、その人が大切にしているものを知ろうとする。

そんな小さな関心が、互いを尊重し合える関係につながっていくのでしょう。

誰かの挑戦や心遣いが、安易な否定によって失われることなく、その人らしい価値として育まれていきますように。

そして、互いの違いを理解しようとする温かなまなざしが、誰かの心に届きますように。

今日も佳き日に

コーチミツル

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