最近のブログでは二宮尊徳の話を取り上げ、その中で「チームビルディング」について触れました。小さな積み重ねが人を育て、やがて組織や地域の文化につながっていくという考え方に、自分は以前から強く惹かれてきました。
現在も会社組織の一員として働いていますし、地元の自治会や神社の集まりにも関わっています。自然とチームのあり方や、人と人がどのように支え合っていくのかというテーマには関心が向きます。そして、こうした現場や経験を重ねるほど「人が人と関わるときの土台とは何だろう」という問いに行きつくようになりました。
その中で思い出したのが、これまで読んできたアドラー心理学の本です。アドラーが語った「共同体感覚」は、まさに人とつながりながら生きていくための大切な視点だと感じます。ただ、この概念を改めて振り返る中で、ひとつ気になったことがありました。それが「貢献の順番」です。
アドラーが語った「共同体感覚」とは
アドラー心理学の中心にあるのが「共同体感覚(Gemeinschaftsgefühl)」です。人が幸せに生きるために欠かせない基本姿勢であり、次の三つの柱で説明されます。
1. 所属感 Belonging
自分は共同体の一員であり、ここに居てよいという安心感
出典: Adler, A. (1933). Social Interest: A Challenge to Mankind.
アドラーはここで「人は世界に属している感覚によって心が安定する」と述べています。
2. 他者信頼 Trust
他者は敵ではなく仲間であるという前提
出典: Dreikurs, R. (1950). Fundamentals of Adlerian Psychology.
アドラーの弟子であるドライカースは、共同体感覚を「他者を信頼し、協力しようとする態度」と説明しました。
3. 貢献感 Contribution
自分が誰かの役に立っているという実感
出典: Adler, A. (1931). What Life Should Mean to You.
アドラーは「人は役に立てるとき勇気を得る」と書き、貢献が人を前向きにさせると述べています。
この三つはどれも大切ですが、特に注意したいのは「順番」も必要ではないかと思っています。貢献感を急いで追いかけてしまうと、自分自身が置き去りになることがあるのではないでしょうか。
なぜ「貢献の順番」が大切なのか
自分の心や生活が不安定なときに人の役に立とうとすると、「役に立てなければ自分には価値がない」という考え方に陥りやすくなります。これはアドラーが大切にした自己受容の考えと真逆の方向となります。
共同体感覚の前提には「自分を受け入れているか」「安心できる人間関係を築けているか」があります。それが整っていない状態での貢献は、依存や自己犠牲につながり、周囲の価値観に巻き込まれてしまうケースもあります。
現代心理学でも、自己が安定しないままの貢献には次のリスクがあると言われています。
- 過剰な自己犠牲
- 他者や組織への依存
- 心身の疲弊やバーンアウト
- 不健全なコミュニティに巻き込まれるリスク
- 見返りを期待することで関係性がゆがむ
こうした状況では、どれだけ良いことをしていても幸せにはつながりません。
シャンパンタワーの比喩とアドラーの考え方の重なり
自分は以前から「シャンパンタワーの比喩」を大切にしています。最上段のグラスが満たされ、それがあふれて次の段へと流れていく。これを人の貢献に置き換えると、まず自分の心が満ちているかどうかが大切になります。そのグラスからあふれたシャンパンが家庭や周りのコミュニティに流れていきます。
アドラーが語った「自己受容があってこそ貢献が健全に働く」という考えと照らし合わせても、自分の感じてきたことと深く重なります。無理をして与えるのではなく、自然とあふれたものを周囲に手渡していくような生き方です。

健全な共同体感覚を育てるための順番
アドラー心理学の理論と、自分が働く場や地域での経験を重ねる中で、この順番がとても大切だと感じるようになりました。
① 自己受容と生活の安定
心身が安定し、自分を責めず受け入れている状態
② 他者との健全な信頼関係づくり
安心できる人、健全な距離感、信頼できるコミュニティ
③ 自然とあふれ出す貢献の循環
無理なく、あふれた分を差し出すという姿勢
この流れが整うほど、チームでも地域でも温かい空気が生まれやすくなります。二宮尊徳が説いた「積小為大」にも通じる、優しくて力強い循環だと思います。
おわりに あなたはどんな順番で幸せと貢献を考えますか
貢献は素晴らしい行為ですが、自分がすり減っていると本来の力を発揮できません。まず自分を整え、そのうえで自然と広がる貢献を大切にすること。それが健全な共同体感覚を育てていく流れだと感じます。
あなたは今どの段階にいるでしょうか。自分のグラスは満たされているでしょうか。そのうえで、自然にあふれてくる貢献の形はどんな姿でしょうか。あなたはどんな順番で幸せと貢献を考えたいですか。
今日も佳き日に
コーチミツル
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