うちの庭には、30年前に親戚のおじさんからいただいた黒松があります。
この木は、自分にとってはただの植木ではなく、季節のうつろいとともに生きてきた時間の記憶でもあります。
ところが最近、この黒松に「気」がないのです。
春、周りの木々が芽吹く中、黒松の葉はどこかくすんで見え、葉先が茶色くなって、秋を待たずにハラハラと落ちていきました。
生前の母が、「松の葉が茶色くなると悲しくなるね」と話していたことを思い出します。
あの時は、ただ聞き流していましたが、今、その気持ちがよくわかります。

黒松の病気と対策について
庭師さんに相談したところ、「松の病気によって弱っている可能性がある」と言われました。
現在は、消毒を行い、芽を摘むのをやめて自然の回復力を待つことにしました。
調べてみると、黒松には次のような病気があることが分かりました。
- 松枯れ病(マツノザイセンチュウ)
マツノマダラカミキリを通して広がる病気で、突然葉が茶色くなり、枯れてしまうことがあります。
予防には、樹幹注入剤(アバメクチン系)の使用や、感染木の伐採・焼却が推奨されています。 - 葉ふるい病
葉の表面に小さな斑点ができ、進行すると茶色くなり落葉します。
対処としては、殺菌剤(チオファネートメチルなど)の散布と、病葉の除去です。 - 赤枯れ病
葉が赤く変色し、枯れていく病気。原因は湿気や風通しの悪さ、真菌によるものなどが考えられます。
病気の進行は目に見えにくいところから始まります。
葉の色や落ち葉の量など、「いつもと違う」に気づくことが、実は一番大切なことなのかもしれません。
オリーブの木の失敗から
以前、畑の跡地にオリーブの木を植えたことがありました。
順調に育っていたはずが、ある春、葉が枯れていることに気づいて見てみると、根元には無数の穴。
オリーブアナアキゾウムシという害虫が、幹の中を食い荒らしていたのです。
大きくなってきたからと安心していた自分の油断でした。
気づくのが遅れ、結局そのオリーブは枯れてしまいました。
ほんの少しの異変に早く気づいていれば…と、後悔が残る出来事です。
生きものの変化に気づく観察力を育てるには
植物も、動物も、人間も、「元気がない」ときは必ず何かしらのサインを出しています。
それを受け取れるかどうかで、命のあり方が変わると感じます。
観察力を育てるために、自分が大切にしている方法を紹介します。
● 「いつもと違う」を意識する
毎日黒松を眺める中で、「今日の葉の色はどうだろう」と考えるだけでも、自然と変化に気づく力が育っていきます。
● 可能な限り頻繁に、全体を俯瞰して見る
朝や夕方など異なる時間帯に、木全体を一歩引いて見るように心がけています。
光の加減や湿気によって、見え方が変わることもあります。
これは、人との関係にも同じことが言える気がします。
身近な人ほど、毎日同じように接しているつもりでも、少しだけ視点を変えると、気づけることがあるのかもしれません。
● 心の声を聞く
「あれ?なんだか気になるな」と感じること。
理由はわからなくても、その「直感」を大事にするようにしています。
心が発するサインに耳を傾けることが、変化に気づくための第一歩になると思います。
● 五感を使う
目で見るだけでなく、手で触れたり、匂いを感じたりしてみると、「いつもと違う」に気づきやすくなります。
● 記録をとる
写真に撮って記録したり、日記をつけることで、微妙な変化を見逃さずに済みます。
通信教育で庭園技能士の資格を取ったとはいえ、
実際の庭や木々と向き合うことは、教科書では学びきれない経験の連続です。
松の前に立って、「元気になってくれよ」と心の中で声をかける。
その気持ちが、植物にもきっと届くと信じたい。
育てることは難しい。でもだからこそ、命と向き合う価値があるのだと思います

今日も佳き日に
コーチミツル
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