
音楽の先生との出会い ― “音を吹く”きっかけ
トランペットを始めたのは小学4年生のとき、音楽の先生に勧められたのがきっかけでした。
自分が入ったのは吹奏楽部ではなく、アコーディオンやオルガン、木琴などが並ぶ 器楽部。
そこにジャズもポップスもなく、目標はただ一つ―― 年に一度の「こども音楽コンクール」。
毎年の発表に向けて、ひたすら練習を重ねる日々。
放課後の音楽室には、いつも木琴の音が響き、その隣で自分のトランペットが重なっていました。
華やかではないけれど、ひとつの音をみんなで合わせようとする時間の中に、
“音を通じて心を交わす喜び”がありました。
それが、自分にとっての音楽の原点です。
家族という新しい旋律
高校を卒業し、20代の前半までトランペットを吹き続けていました。
けれど結婚をし、やがて 双子の父親 になったとき、「家族の時間を最優先にしよう」と決めました。
トランペットをそっとケースにしまった日、少しの寂しさと同時に、不思議な静けさがありました。
振り返って考えてみた時、」それは、“音が止まった”というよりも、「休符(きゅうふ)」 に入ったような感覚。
音楽の中で休符は、ただの沈黙ではありません。
次の音をより鮮やかに響かせるための“間(ま)”です。
家族と過ごすその時間も、きっと次の旋律への準備だったのかもしれません。
休符のあいだも、音は生きていた
トランペットを離れていた30年の間、表面上は「音のない生活」でも、音が遠いところに行ったようでそうでないような感覚だったのかもしれません。
夢の中でトランペットを吹いていることがありました。練習していなくて、いきなり本番で困っていたり、友達と一緒に楽しく音はやわらかく、自由で、どこまでも伸びていく感じだったり。
目覚めたあとも、その響きが胸の奥に残っていました。
職場の会議中、ふと気づくと、無意識に指が 半音階の運指 をなぞっていることもありました。
資料をめくりながら、知らぬ間にラッパのポジションを押していたのです。
――音は止まっていなかった。
ただ、自分の中で静かに呼吸を続けていたのだと思います。
30年後、もう一度吹いてみよう
双子も成人し、ようやく自分の時間が戻ってきたころ、「もう一度吹いてみよう」と思いました。
最初の音はうまく出ませんでした、楽器がおかしいのだろうと思ったほどです。
でもベルの中に空気が通った瞬間、“ただいま”と音が応えてくれたような気がしました。
かつての自分が、ずっと待っていてくれたように、その音は、若い頃よりも深く、温かく響きました。
師匠との出会い ― 音が導く縁
再び音を吹き始めた自分を導いてくれたのが、広島のトランペッター 河村貴之師匠。
彼の音は渋くエアーな風のように自由で、「トランペットは音を出す楽器ではなく、心を響かせるもの」
という言葉に、胸の奥が熱くなりました。
テクニックよりも、“生き方が音になる”――
その教えは、人生そのものにも通じていました。
そして島根に帰ってきてからは、熱田修二師匠(元シャープフラッツのリードトランペット奏者)とのご縁がありました。
10年前、まだ自分は観客として客席に座り、ステージ上で輝く師匠の音を羨望の眼差しでただ見上げていました。
その音に魅了され憧れた日から――今では月に数回、師匠と同じステージで音を重ねています。
“観る側”から“奏でる側”へ。
縁が時間をかけて円を描き、再び音を通して結ばれた瞬間でした。
音楽が教えてくれた「縁の呼吸」
音楽には休符があります。
でもそれは、音の終わりではなく、次の音を輝かせるための間。
人生もまた、そうしたリズムでできている。
一見止まったように見える時間の中でも、心は成長し、音は静かに熟していく。
30年という休符を経て再び鳴らした音は、若い頃よりも少し深く、柔らかく、そして誇らしい。
あの静寂もまた、自分の音の一部だったのです。
コーチとして感じる「再会の意味」
コーチングでも同じように、“成長”とは「新しい自分になること」ではなく、
「かつての自分と再会し、本来の自分の想いに素直に従うこと」でもあると言えると思います。
過去を振り返るのではなく、過去の自分と今の自分が手を取り合うとき、
人は静かに、確かに前へ進みます。
吹く音も、生きる音も、すべてが今この瞬間につながっている――
それを教えてくれたのが、トランペットという“縁”でした。
最後に ― あなたの中の“休符”は、どんな意味を持っていますか?
一度止まった音は、終わりではない。
休符の先には、次の旋律が待っている。
あなたの中に、かつて夢中で奏でた“音”はありますか?
その音が、今も心のどこかで響いているなら、それはあなたの「縁の回送」が始まろうとしている証です。
今日も佳き日に
コーチミツル
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