自分はトランペットという、
「からだと楽器が一体になって初めて音が出る」難しい楽器を吹いています。
特にソロがある本番では、プレッシャーに弱く、
「練習のときのように吹けなかった」「音が詰まった」と感じることが多い。
そんなとき、思うのです。
「誰かに期待されているわけじゃないのに、
なぜこんなに自分を追い込んでしまうんだろう?」
自分が自分にかける「内的プレッシャー」
心理学的には、これは「内的プレッシャー(internal pressure)」と呼ばれます。
外からの圧ではなく、自分自身がつくり出すもの。
「あの音が出せなかったら終わりだ」
「前より下手に聴こえたら恥ずかしい」
こうした思考は、一見すると“努力家”の証に見えますが、
実は「失敗したくない」という防衛的な緊張を生み、
身体を硬くしてしまうことがあります。
結果、呼吸が浅くなり、音が詰まり、
まるで自分で自分を追い詰めるような“自爆的プレッシャー”のループに入ってしまうのです。
祝詞で気づいた「届けたいという思い」
そんな中、先日の出雲國眞名井神社の例祭で祝詞を奏上したとき、
不思議と声が震えませんでした。
これまで人前で話すときはいつも緊張していたのに、
そのときは「神様に願いを届けたい」という思いしかなかったのです。
その気持ちで一心に読み上げると、
声も安定し、堂々と唱えることができました。
この体験から気づいたのは――
プレッシャーを抑えることではなく、
「届けたい相手」を明確に意識すると、自然と力が整うということ。
トランペットもまったく同じです。
“聴かせる”のではなく、“届ける”と意識した瞬間、
緊張が“重圧”から“集中”へと変わるのです。
プレッシャーの二面性(心理学的視点)
自己決定理論(Deci & Ryan, 2000)では、プレッシャーには2種類あるとされています。
| 種類 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 自己決定的プレッシャー | 「自分が上達したい」「誰かに想いを伝えたい」 | 成長・集中・充実感を高める |
| 強制的プレッシャー | 「失敗できない」「うまくやらなきゃ」 | 緊張・萎縮・失敗を招く |
祝詞を奏上したときの自分は、まさに前者でした。
“うまくやらねば”ではなく、“願いを届けたい”という内側からの動機。
この瞬間、プレッシャーは味方になったのです。
トランペットが教えてくれたこと
トランペットの音は、心の状態を映します。
「うまく吹こう」と思えば思うほど、音が震えて固くなる。
けれど、「この音を届けよう」と思うと、音が真っすぐにそして柔らかく伸びる。
この違いこそ、プレッシャーの使い方の違いです。
プレッシャーはなくせません。
でも、向ける方向を変えることはできます。
「自分を責めるための圧」ではなく、「誰かに届けるための圧」に変える。
それだけで、同じ緊張が“支え”へと姿を変えるのです。
例:実践本番前の整え方
- 呼吸に戻る
まず、ゆっくりと全てを吐き出して、次に息を吸うときは「音を出すため」ではなく、「心を整えるため」と意識する。 ゆっくりと呼吸が整えば、心も体も整います。 - “届けたい相手”を思い浮かべる
演奏なら聴き手、祈りなら神さんとか、その対象となる相手が一番後ろの席に座っているイメージで
「誰に届けたいのか」を思い描くことで、プレッシャーの質が変わります。 - セルフトークを変える
「失敗できない」→「思いっきり失敗してみよう」、「調子が悪かったらどうしよう」→「どんな調子でもその中でベストを尽くそう」 「完璧に吹きたい」→「50点を目指してそれ以上だったらラッキー」「音を届けよう」→「心や気持ちを音に載せて届けよう」
小さな言葉の違いが、体の反応を変えます。
まとめ
フリードマン氏が語った「大谷ほど自分にプレッシャーをかける人はいない」という言葉。
それは「自分を追い詰める」という意味ではなく、
「理想に誠実であり続ける」という意味だと思います。
自分も、祝詞とトランペットを通じて実感しました。
“プレッシャーを消す”のではなく、“方向を変える”。
それだけで、震えていた心が、静かに響く音へと変わるのです。
あなたが本番で感じるプレッシャーは、誰がどこからどんな風に与えていますか?

今日も佳き日に
コーチミツル
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