
自分は、信じやすい方なのだと思います。
過去のブログでもそのようなことを書いたことがありました。
誰かから頼まれたり、真剣な表情で話をされたりすると、つい「助けたい」「応えたい」という気持ちが先に立ってしまいます。
そしてあとになって、「あれは、よく考えると変だったかもしれないな」と気づくことも、何度かありました。
もしかすると、自分には“人を疑わない気持ちが強すぎる”ところがあるのかもしれません。
疑うことと、信じることのはざまで
最近は、特殊詐欺や情報詐欺など、信じたことで被害に遭うという話もよく耳にします。
そのたびに、「やっぱり、もっと疑った方がいいのかな」と感じる場面も増えてきました。
けれども、自分の中にはやはり、誰かを疑ってかかるような人間にはなりたくないという気持ちもあります。
そんな中で、自分なりに「信じることと疑うことのバランス」について、あらためて考えるようになりました。
疑い深い人との会話で気づいたこと
以前、慎重でとても疑い深い方とお話をする機会がありました。
自分が何の疑いもなく受け入れていた話に対して、その方は次々と別の視点から質問をしてくれたのです。
「それって裏は取れてるの?」
「もしかして、こういうケースもあるんじゃない?」
最初は驚きましたが、そのやりとりの中で気づいたことがありました。
自分には、見えていなかった視点がたくさんあるのだなということです。
信じやすいことは「弱さ」じゃない
信じやすいことは、ともすると「危うい」と見られてしまうこともあるかもしれません。
でも、実際には人を信じることができる人ほど、対人関係の満足度や社会的なつながりが深いという研究もあるそうです(※Collins & Read, 1994)。
信じるということは、けっして弱さではなく、人と人とを結びつける大切な力でもあるのだと感じます。
けれど、感情に流されると判断を誤ることも
一方で、人は強い感情の影響を受けやすい生きものです。
不安、同情、焦り、期待…。そんな気持ちが高まっているときほど、冷静な判断が難しくなるとも言われています(※Ekman, 1992)。
詐欺の多くが、まさにその“感情”を巧みに利用していることを考えると、やはり一度立ち止まる視点が必要なのかもしれません。
視点を少しズラすということ
ノーベル賞を受賞した行動経済学者ダニエル・カーネマン氏は、私たちの思考には2つのモードがあると説明しています。
ひとつは、直感的で感情に近い「速い思考」。
もうひとつは、慎重で論理的な「遅い思考」。
信じやすい人が判断を誤るのは、この速い思考が優位になっているとき。
だからこそ、「これ、本当に大丈夫かな?」と一歩視点をズラしてみることが、とても大切になってきます(※Kahneman, 2011)。
他の可能性もあるかもしれないと考える力
「こうに違いない」と思ってしまうのは、人間の自然な傾向です。
でも、そこに「他の可能性もあるかもしれない」という問いを添えることで、思い込みや早とちりを防ぐことができます。
こうした姿勢は、1970年代に行われた心理学研究でも、情報判断の精度を高める効果があると報告されています(※Tversky & Kahneman, 1974)。
自分を守る“やさしい問いかけ”
そんな背景から、自分は「スライドアウトの質問」と呼ばれる問いを使うようになりました。
これは、自分の立場や視点から少し変えて、問い直すものです。
たとえば──
- 「これは、大切な人にも安心して勧められるか?」
- 「数日たってから見たら、どう感じるだろう?」
- 「自分はいま、どんな感情に動かされているか?」
- 「よく知っている家族がこんなことを言ってきたことがあっただろうか?」
- 「大切な話をこのように伝えるだろうか?」
こういった小さな問いが、自分を守る「内なる対話」になると感じています。
※「スライドアウトの質問」については、別の記事でもご紹介しています。
(→関連記事:155.「失言」はなぜ起きるのか? (米を買ったことがないという農水大臣の発言から考えたこと))
信じることを、これからも大切にしたいから
自分は、これからも人を信じる気持ちを手放したくありません。
ただ、信じるからこそ、その裏にある可能性にも目を向けられるようでありたいと思っています。
疑うことと、信じることの間にある「問い」。
それを持てるかどうかで、自分を守る力も、信じる力も、より豊かなものになっていくのではないでしょうか。
まとめ
- 人を疑わないことは、実は社会的な強みでもある
- ただし、感情に流されてしまうと判断を誤ることも
- 視点をズラし、問いを持つことで、冷静な判断ができるようになる
- 信じることと守ることは、きっと両立できる
今日も佳き日に
コーチミツル
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