
最近、「えっ、どうしてそんなことを?」
と感じるような発言がニュースになることがあります。
つい先日も、農林水産大臣が「米を買ったことがない」と語ったと報じられ、驚きや困惑の声があがっていました。
私も、最初にそのニュースを見たときには戸惑いを感じました。
ただ、そこで怒ったり切り捨てたりするのではなく、どうしてこうした言葉が生まれるのかを少し立ち止まって考えてみたいと思ったのです。
発言の背景と今の暮らし
2025年5月上旬、江藤拓農林水産大臣が、都内で開かれた自民党の支援者向け会合の中で、「米を買ったことがない。支援者の方からいただいている」と発言されたと報じられました。
事実としてそうだったのかもしれませんし、悪気があったわけではないとも思います。
けれど、今、米の価格はこの数年で大きく上がっています。
▶ 米の小売価格の変化(10kgあたり)
- 2023年5月:約4,980円
- 2025年4月:約9,540円
この2年間で、価格はほぼ倍になっているのです。
毎日のごはんをどう工夫して食べようか、外食を減らそうか、そんなことを日々悩んでいる人が多い中で、この発言はどう受け止められるだろう…と胸が詰まるような思いがしました。
なぜ「失言」が起こるのか?
私は、失言とは「思っていることが、意図せずポロッと表に出てしまった状態」だと思っています。
自分でも気づいていないような価値観や無意識の感覚が、ふとした瞬間に言葉になってしまう。
特に、安心できる場、あるいは自分を応援してくれている人の前では「つい」本音が出やすいのかもしれません。
ただ、それが悪いということではなくて、
だからこそ「どのような立場で、誰に向けて、何を話しているのか」を丁寧に考えることが必要なんだと、改めて感じさせられました。
立場を超えて想いを巡らせる5つの視点
失言を防ぐには、自分の視点だけで話すのではなく、
少し視点をずらして、他の立場から物事を見てみることがとても大切です。
私が日々のコーチングで学び続けている「スライドアウトの質問」という手法があります。
これは、「自分の立ち位置を一歩ずらして、別の視点から問い直す」というものです。
たとえば、こんなふうに想いを巡らせてみると、言葉の質が変わってくるように思います。
1. 消費者の視点
「もし私が、毎月の食費をやりくりしている立場だったら、この言葉はどう響くだろう?」
2. 農家の視点
「米を育ててくれている農家さんは、どんな気持ちになるだろう?」
3. 飲食業者の視点
「食堂の店主さんは、原材料の高騰にどれだけ苦労しているだろう?」
4. 支援者の視点
「支援してくださっている方々は、この言葉をどう受け止めるだろう?」
5. 一般国民の視点
「いま、この発言をテレビで見た人は、どんな気持ちになるだろう?」
これらの視点が全てではないかも知れませんが視点を変えるだけで様々な感覚や感情が現れてきます。
自分自身、まだまだです
偉そうに書いてしまっていたらごめんなさい。
自分自身も、ふとした場面で不用意なことを言ってしまったり、あとから反省することがよくあります。
だからこそ、こうして自分への問いかけを重ねていくことの大切さを、最近ようやく少しずつ感じ始めたところです。
言葉って、本当に難しい。
でも、だからこそ丁寧に向き合っていきたいなと思います。
私たちはみんな、それぞれの立場で日々頑張っていて、
そして誰かの言葉に励まされたり、傷ついたりしながら生きています。
特に、影響力のある立場の方の言葉には、たくさんの人が耳を傾けています。
私も含めて、誰もが「失言」から学び、「想像力ある言葉」を育てていけたらいいなと思います。
次に何かを伝えるとき、
「これは誰のための言葉だろう?」と、ひと呼吸おいてみること。
それだけでも、きっと世界の空気は少しだけやわらかくなるのではないかと信じています。
今日も佳き日に
コーチミツル