350.振り子の法則だけでは語れない、人生の動き( 幸不幸を“螺旋(らせん)”として捉えるという視点)

最近、YouTubeを見ていると「振り子の法則」という言葉をよく耳にします。良いことがあれば悪いことが返ってきて、また良いことが来る――まるで振り子のように人生が行ったり来たりするという考え方です。水戸黄門の主題歌にある「人生楽ありゃ苦もあるさ」というフレーズを思い出すと「なるほどなあ」と思う瞬間もあります。

しかし、同時に「本当に人生はそんな単純な往復運動なのだろうか」と感じることもあります。自分の人生を振り返ると、良いことと悪いことが交互に起きるというより、もっと立体的で複雑な動きをしてきたように思います。

今日はそんな“人生の動き”について、少し調べてみましたのでそれも踏まえながら、そして自分自身の感覚としての「螺旋階段モデル」をもとに整理してみたいと思います。


振り子の法則とは何か(学問的な位置づけ)

まず、学術的に「振り子の法則」とされるものは、物理学における単振動(simple harmonic motion)に由来します。これは左右に一定の周期と振幅で揺れる運動ですが、人生における「振り子の法則」はあくまで比喩として使われています。

心理学や哲学、スピリチュアル分野では、次のような意味で引用されることが多いようです。

  • 物事には“反動”(揺り戻し)が起きやすい
  • 良いときも悪いときも永続しない
  • 極端に偏ると反対方向に振れる可能性が高まる

古代中国の「塞翁が馬(さいおうがうま)」のように、“幸と不幸は表裏一体である”という思想とも親和性があります。

ただし、この「振り子の法則」は統計的・科学的なデータで証明されているわけではありません。あくまで「人生をどう捉えるか」というフレームであり、「必ず良いことと悪いことが交互に起きる」という法則性を持つわけではないのです。


自分がしっくりこない理由

― 人生は往復ではなく“発展”している感覚

自分の感覚として、人生は振り子のように行ったり来たりというより、螺旋階段に近い動きをしていると思っています。

最初は1階の小さな螺旋から始まり、経験や人とのつながりが広がるたびに、その螺旋の半径が少しずつ大きくなる。同じ位置を回っているように見えても、実際には少しずつ高さが変わり、そこから見える景色も違ってくる。

良い出来事が螺旋を広げることもあれば、悪い出来事が一時的に立ち止まりや下降をもたらすこともあります。ただ、それすらも次の上昇につながる“栄養”になることがあります。そう考えると、人生は単純な左右の揺れではなく、もっと立体的で持続的な動きに近いと感じるのです。


螺旋階段モデルの背景(学術的視点)

人生を「螺旋」で捉えるモデルには、学術的にもいくつかの裏付けがあります。

スパイラル・ダイナミクス(心理発達理論)

人間の価値観の発達は直線ではなく、螺旋状に拡張しながら成熟していくと説明されます。

ブロンフェンブレンナーの生態学モデル

人は「個人」「家庭」「学校・職場」「コミュニティ」など、同心円状の環境と相互作用しながら成長するという考え方で、環境の層が広がるにつれて発達の質も変わります。

ナラティブ心理学

出来事そのものより「どう語り直すか」で、人の意味づけが更新されていく。これは螺旋的な“理解の深化”に近い構造です。

こうした研究を見るにつけ、「人生は往復運動よりも、拡張や深化を伴う立体的なプロセス」のほうが現実に近いと感じます。


螺旋階段の中での揺れ

以前ブログで199.「勝ちか負けか、ではなく――“勝つか、学ぶか”という視点」でもらせん階段のことにふれましたが、人生が螺旋だとしても、途中で揺れは起きます。停滞したり、下ったように感じたり、同じ場所を回っているように思える時期もあります。

しかしそれは、螺旋の“内部での揺れ”であり、必ずしも“戻っている”わけではありません。視点が変わったり、価値観が広がることで、次の段へ上がる準備をしていることもあります。

つまり、人生の揺れは「振り子の揺れ」ではなく、「螺旋の揺れ」として捉えるほうがしっくりくるのです。


まとめ

「人生楽ありゃ苦もあるさ」と歌われるように、確かに人生には浮き沈みがあります。YouTubeなどで語られる振り子の法則も、人生の揺れをとらえるひとつの見方として理解できます。

しかし、自分はどちらかと言えば、人生は“往復するもの”ではなく、“広がりながら進んでいくもの”だと感じています。良いことも悪いことも、螺旋の半径を広げ、高さを変え、景色を変えてくれる出来事です。

螺旋階段のように上へと向かうのか、同じところを回り続けるのかは、日々の選択や意志、関わるコミュニティの質で大きく変わります。だからこそ“幸か不幸か”というラベルよりも、その出来事が螺旋のどの部分を広げてくれるのかを丁寧に見ていきたいと思っています。


最後に、ひとつ問いを。

あなたの螺旋階段は、今どんな広がり方をしていますか?
そして、その螺旋をどんな方向へ伸ばし
ていきたいですか?

今日も佳き日に

コーチミツル

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