「アピールする力」って、どう思いますか?
最近話題のビジネス書『雑用は上司の隣でやりなさい』(著:山本康博氏)は、働くうえでの“見せ方”や“戦略的な行動”にスポットを当てた内容で、確かにそうだなと感じる場面がいくつもありました。
たとえば、出張や長期休暇のあとの「お土産」。昭和の時代には中元やお歳暮も含めて、職場でのこうしたやりとりが当たり前でしたが、最近は「虚礼廃止」の流れもあり、控えめになってきているようにも思います。
でもこの本では、「あえて見えるかたちで」行動することの価値が語られています。それは単なる媚びやパフォーマンスではなく、自分を知ってもらう“機会をつくる”という考え方でした。
陽徳という生き方
この考え方は、以前自分が書いたブログ【13.陽徳と陰徳って何ですか?】の「陽徳(ようとく)」に通じるものがあると感じました。
陽徳とは、見えるかたちで人のためになることをすること。言い換えるなら「アピールされる善意」です。職場や学校のように「評価」が関係する場では、この陽徳はとても重要な意味を持ちます。
たとえば、上司の隣で雑用をこなしている人は、自然と目につきますし、「よくやってくれてるな」と思ってもらえる確率も高くなります。それがきっかけで仕事を任されるようになったり、信頼が生まれたりもするのです。
陰徳の持つ、静かな強さ
一方で、やはり自分が好きなのは「陰徳(いんとく)」の方です。誰にも知られなくても、感謝されなくても、見返りを期待せずに努力を積み重ねる姿は、静かだけれど力強いものがあります。
たとえば、スポーツの世界で、先生の前だけでがんばる選手がいたとしても、本番で結果を出せるのは、誰にも見られていないところで努力を続けてきた選手です。練習が終わったあとも黙々と素振りをする、走り込みをする――そうした「陰の努力」こそが、本物の力を育てているのだと思います。
「見せかけ」だけでは通用しない
ただし、陽徳には落とし穴もあります。それは、「見せかけ」だけになってしまうこと。外側だけ取り繕って、実が伴っていなければ、信頼はあっという間に崩れてしまいます。
このことを思い出させてくれたのが、1980年の高校野球で一躍注目を浴びた荒木大輔さんのエピソードです。
荒木さんは、早稲田実業に入学した当初は控えの三塁手としてベンチ入りしていましたが、大会直前にエースがケガをし、急きょ投手として起用されました。そして準決勝では優勝候補・帝京高校を相手に3安打完封という見事な投球を見せたのです。
この活躍の背景には、与えられたポジションに甘んじることなく、人知れず準備を続けていた姿がありました。まさに、「陰徳」が実を結んだ瞬間だったように思います。
「大ちゃんフィーバー」として一世を風靡したその華やかな活躍も、その裏にある“陰の努力”があってこそ、初めて輝きを放ったのではないでしょうか。
陽徳と陰徳、どちらも必要な時代に
結局のところ、どちらか一方だけでは偏りが生まれます。
「陰徳だけを積んでいても、誰にも気づかれないかもしれない」
「陽徳ばかりを気にしていても、中身がともなわなければ信頼されない」
だからこそ、この二つのバランスをとることが、自分らしく生き、成長し、信頼を築いていくために大切なのだと思います。
「見せる努力」と「見せない努力」――どちらも本物なら、きっといつか伝わります。

最後に、問いかけです。
あなたは、最近どんな「陰徳」を積んでいますか?
そして、それを支える「陽徳」のアクションはありますか?
どちらも自分の成長の糧として、日々大切にしていきたいですね。
今日も佳き日に
コーチミツル
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