梅干しを、自分の手でつくってみたくて
今年、自分は初めて「梅干しづくり」に挑戦しました。
塩漬けから紫蘇漬け、そして土用干し――そのどれもが手間のかかる作業でしたが、不思議と心は穏やかでした。
たったひと粒の梅干しが、こんなにも時間と手間をかけて生まれるものだったとは、実際にやってみて初めて感じたことです。
今のところ順調に進んでいて、昨日ようやく土用干しが完了しました。
これから3ヶ月の保存期間を経て、いよいよ味わう日がやってきます。
梅干しづくり、工程と気づき
まずは完熟した梅を一粒ずつ丁寧に洗い、1週間塩で漬け込みました。
次に、赤紫蘇を塩揉みしてアクを取り、梅酢とともに漬けてさらに1週間。
仕上げは、土用の晴れ間を見計らって3日間、天日で干しました。
ひと粒ずつ裏返す作業には根気がいりますが、日差しの中で少しずつしぼみながら変化していく梅を見ていると、
まるで我が子を見守るような気持ちになっていました。
こうして手間をかけて生まれる一粒は、スーパーで並んでいるものとは、まったく違った尊さを感じさせてくれます。
梅干しの歴史と起源
梅干しの歴史はとても古く、平安時代の文献にはすでに薬として使われていた記録が残っています。
とくに戦国時代には、武士の携帯保存食や傷の殺菌、食中毒の予防にも使われたとされ、
まさに“天然の保存食”であり“天然のくすり”でした。
その効能から、現代でも「日本のスーパーフード」と呼ばれるほど。
手軽に食べられる反面、その背景にある歴史や知恵には、深い感謝を覚えます。
栄養素と自然食品としての価値
梅干しには、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸が豊富に含まれています。
これらは疲労回復や胃腸の働きを整える作用があり、昔から「夏バテ防止」にも重宝されてきました。
また、強い塩分濃度によって防腐効果があり、長期間保存できるのも魅力です。
自分でつくる梅干しは、添加物も甘味料も一切使わず、素材の力そのものを活かした“自然食品”。
その素朴さと力強さに、改めて驚かされました。
梅干しの意外な使い道 ― 食養生と民間療法として
梅干しは“食べる”だけではなく、昔から“民間療法”としても使われてきました。
たとえば、熱が出たときにこめかみに梅干しを貼る――
これは、梅干しの酸と塩分で体内の熱を引くと考えられていたからです。
自分も子どものころ、母にそうしてもらった記憶があります。
ひんやりとした感触と梅の香りに、どこか安心した感覚が残っています。
そのほかにも、焼いた梅干しにお湯を注いで飲む「梅醤番茶」や、梅酢を使った健康飲料など、
昔の人は暮らしの中で梅干しを薬のように使っていたのです。
こうした生活の知恵は、今の時代にも通じるものがあるように思います。
工場生産との違い
市販の梅干しの多くは、甘味料や調味液で味を調整した“調味梅干し”です。
それももちろん食べやすさの工夫ですが、
手づくりの梅干しは“味が自然のまま”であるぶん、酸っぱさも塩気もまっすぐに伝わってきます。
時間をかけて漬け、干して、待つ――その過程そのものが、味わいになっていくのかもしれません。
「食べる」というより、「いただく」気持ちに近づいていきます。
あと3ヶ月、熟成のときを楽しみに
土用干しを終えた梅干しは、いまガラス瓶のなかでじっと眠っています。
あと3ヶ月、ゆっくりと熟成のときを過ごしながら、味わいが深まっていくのを待つばかりです。
手間をかけてものを育てること、自然と向き合う時間、
そして、生産者や先人の知恵への感謝。
そんな思いを、たったひと粒の梅干しが自分に教えてくれたように思います。
あなたの食卓にある梅干し、
その一粒の旅路を、想像したことはありますか?

今日も佳き日に
コーチミツル
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