
今日は、「予祝(よしゅく)」という考え方についてお話ししたいと思います。
春の神社のお祭りに参加していて、ふと気づいたことがありました。
この時期に行われるお祭りは、秋の実りを前もって祝うことを目的としているという点です。
まだ田植えが始まったばかりのこの季節に、豊作の喜びを神様に届ける。
それは「こうなりますように」ではなく、「もうそうなった」という前提で行われる祝福。
未来を信じる心がかたちになって現れている、とても美しい風習だと思います。
予祝とは、「叶う前に祝う」こと
「予祝」という言葉は、前もって祝うという意味を持ち、
古くは『万葉集』の中にもその語が登場するなど、日本文化の根底にある考え方です。
神事や農耕儀礼の中で、まだ見ぬ成果を信じて喜ぶという姿勢は、
人が自然と共に生きてきた歴史の中で、ごく自然に根づいてきたものなのでしょう。
この「予祝」という行動には、希望や信仰といった精神的側面だけでなく、
心理的・生理的な効果もあるとする研究もあります。
世界に見られる予祝の文化
予祝的な儀礼は、日本だけにとどまりません。
- アフリカの雨乞いの儀式:雨が降る前に、すでに降ったことを想定して踊り、感謝する。
- ネイティブアメリカンの儀式:狩りの成功を先に神に伝え、祝福の舞を捧げる。
- 古代ギリシャのデメテル信仰:収穫の前に、実りに感謝する宴を行う。
- インドのホーリー祭:春の訪れと豊穣を先取りして祝う祭り。
人類が太古から行ってきた「予祝」は、共通する心理的知恵なのかもしれません。
イメージトレーニングもまた予祝
現代では、「イメージトレーニング」という形で、予祝的なアプローチが幅広く活用されています。
たとえばトップアスリートは、大会前にメダルを獲得した自分を心に思い描きます。
ビジネスの場面でも、成功して拍手されている自分の姿を、プレゼン前にイメージする方が増えています。
このような行動は、「予祝」の一形態と考えることができます。
神経科学の分野では、「予測符号化理論(predictive coding)」という概念があります。
これは、脳が未来を予測しながら行動を調整しているという考え方です。
また、**RAS(網様体賦活系)**という脳の機能が、「意識した情報」に対して敏感に反応するため、
叶えたい未来を明確にイメージすることで、その実現に必要な情報や行動が自然と選ばれるようになると言われています。
🔍 参考文献・エビデンス
- 中村天風著『成功の実現』(日本経営合理化協会出版局)
- 村松大輔著『予祝のススメ』(徳間書店)
- Lisa Feldman Barrett. How Emotions Are Made(2017, Houghton Mifflin Harcourt)
- Friston, K. (2010). “The free-energy principle: a unified brain theory?” Nature Reviews Neuroscience
- Goleman, D. (2006). Social Intelligence: The New Science of Human Relationships
自分自身の予祝として
このブログでも以前書いたことがありますが、
私には、「故郷の唄」という作品で、亡き友人アットとともにオスカー賞を取るという夢があります。
夢というにはあまりに大きすぎるかもしれません。
ですが、アットと語り合ったあの夜の笑顔を思い出すと、
あれはすでに予祝だったのではないかと、今は感じています。
だから今日は、その夢がすでに叶ったものとして祝ってみようと思います。
彼とよく飲んでいたウイスキー「碧(あお)」を、静かにぐい吞みに注いで(笑)。
未来を信じて、そしてその未来がすでにあるものとして――
アット、ダバ、みんなありがとう、乾杯!!

ところで、
もしあなたが「予祝」するとしたら、
どんな未来を先に祝ってみたいと思いますか?
ほんの小さな一歩でもかまいません。
心の中で、その未来を「すでに起きたこと」として祝ってみてください。
もしかしたら、その日から、未来の風向きが少しずつ変わり始めるかもしれません。
ご感想や、あなたの予祝体験があれば、ぜひ教えてください。
それではまた、心澄む時間の中でお会いしましょう。
今日も佳き日に
コーチミツル