
「カニバリーゼーション」という言葉を聞いたとき、自分は最初“蟹バリーゼーション?”と想像してしまいました。カニは甲羅が堅いから…。もちろん、蟹は関係ありません(笑)。
この言葉は英語の Cannibalization に由来し、ビジネスでは「自社の商品やサービス同士が市場を奪い合ってしまう現象」を指します。
たとえば、新しいスマホを発売したら旧モデルの売上が落ちてしまう。これが典型的なカニバリーゼーションです。
ネガティブに見える“共食い”
一見すると「せっかく新しい商品を出したのに、既存商品の売上を食ってしまった」と考えられるため、ネガティブに捉えられがちです。
利益が分散したり、ブランドの力が弱まったりするリスクもあります。
しかし、すべてが“悪い”わけではありません。実は、企業はあえてこのカニバリーゼーションを利用していることがあります。
通信業界の事例:auとUQモバイル
代表的なのが通信業界です。KDDIは「au」というメインブランドを持ちながら、あえて「UQモバイル」という格安ブランドを展開しています。あ、自分がSoftbankさんからUQモバイルさんに変更したので事例にさせていただきました。自分は、系列が違う通信会社に変更したので、それはそれでアリかと思いましたが、「どうして自分で利益を削るようなブランドをつくるのだろう?」と不思議に思いました。
実はこれには大きく二つの理由があるそうです。
- 政府の要請
総務省は長年「携帯料金が高すぎる」として通信費の引き下げを要請してきました。2015年ごろからは「月5,000円以下プランの導入」や「端末と通信の抱き合わせ割引禁止」など具体的な施策を打ち出し、大手キャリアは安いプランやサブブランドを持たざるを得ない状況になったのです。 - 競争の現実
もし自社に安いブランドがなければ、ユーザーは楽天モバイルや独立系MVNO(格安SIM)に流れてしまいます。つまり「他社に食われるくらいなら、自分の中で食い合う方が良い」という戦略なのです。
結果として、auとUQモバイルは“自社内での共食い”を演じつつ、KDDIグループ全体のシェアを維持しています。
データで見るシェアの変化
ここで、ChatGPT君にデータを教えてもらい整理してみました。数字を追うと、各社がなぜ自ら格安ブランドを持つのかがよく分かります。
- 2013年(格安SIM登場前)
ドコモ40.9%/au25.9%/ソフトバンク22.6%
→ 当時は大手3社が市場を寡占し、サブブランドや格安SIMはほとんど存在しませんでした。 - 2025年3月末(最新)
・ドコモ:33.9%(含むMVNOで40.2%) ※オンライン専用ブランド「ahamo」を展開。
・KDDI:26.7%(含む31.3%) ※サブブランド「UQモバイル」やオンライン専用「povo」を展開。
・ソフトバンク:19.2%(含む24.5%) ※サブブランド「Y!mobile」やオンライン専用「LINEMO」を展開。
・楽天:3.2%(含む4.0%) ※サブブランドは持たず、楽天モバイル単独で展開。
さらに、サブブランド(UQモバイル・Y!mobile)やオンライン専用プラン(ahamo・povo・LINEMO)だけで全体の約2割近いシェアを持つようになっています。
つまり、格安ブランドは「自社の利益を食う存在」であると同時に、「市場を他社に奪われないための防衛策」になっているのです。
他業界にもある“自社内の共食い”
- 自動車業界:トヨタは高級ブランドのレクサスを持ちつつ、カローラやヤリスなど低価格帯も展開。
- ファッション業界:ユニクロを展開するファーストリテイリングは、さらに安価なGUを運営。
- 飲料業界:コカ・コーラは通常のコーラに加え、ゼロ・ライト・カフェインレスを展開。
いずれも「古い商品を守る」だけではなく「新しいニーズに応える」ために、自分の中で“食い合う”ことを選んでいます。
コーチング的に捉えると
この現象は、個人の成長にも似ているかもしれません。
時間には限りがあるため新しい習慣ができると、古い習慣は自然に淘汰されていきます。
一見マイナスに見える“共食い”ですが、それは新しいステージに進むための前向きな置き換えともいえるのです。
カニバリーゼーションは単なる「共食い」ではなく、企業にとっては生き残るための選択でもあります。
そして自分自身にとっても「古い自分を食って、新しい自分を育てていく」ことが、成長の一歩かもしれません。
あなたは最近、自分の中で“古いものを食って(やめて)新しい習慣に置き換えた”経験はありますか?
今日も佳き日に
コーチミツル
#カニバリーゼーション #ビジネス戦略 #通信業界 #自己成長 #コーチング思考