失敗が起きたとき、心の中で誰を最初に思い浮かべるでしょうか。
「自分かな…」と胸がチクリとする人もいれば、
「環境や他の人のせいだ」と感じる人もいるかもしれません。
どちらが正しい、という単純な話ではありません。
それぞれに役割があり、ほどよいバランスがあってこそ
人もチームも成長していく――
今日はそんなお話です。
10年前の自分が抱えた“自責”
10年前、コーチングを学び自信が芽生え始めていたころ。
自分はリーダーとしてチームに関わる毎日を、
コーチング的アプローチを中心に歩んでいました。
ところが思うように進まない仕事が続き、
「チームが機能しないのはお前のせいだ」
そんな言葉をかけられたことがあります。
もともと自責の念が強い自分は、
「やっぱり自分が悪いのか」と納得してしまった。
会社に行くのが辛く、病院に通い、
それでも熱いシャワーで気持ちを奮い立たせて出勤していた日々を
今も鮮明に覚えています。

チームは“人の集まり”
あれから10年。
今の自分がはっきりと言えるのは、
チームがうまくいかない理由を一人に背負わせることは絶対にあり得ない
ということです。
バレーボールのように、
スパイクが得意な人もいれば、
レシーブで輝く人もいる。
長所を生かし、短所を補い合って初めて
“チーム”が息づきます。
あの頃の自分に会えるなら、
「あなた一人の責任じゃない」と
そっと肩に手を置きたい。
自分でいうのも何ですが…自責の人は優しい
自分でいうのも何ですが、
自責に傾く人は、人に優しいところがあるように思います。
他人の気持ちを思いやるあまり、
自分を責めてしまうことが多いのかもしれません。
けれど、理不尽に「あなたのせいだ」と
一方的に責められたとき、
黙って飲み込むだけでは心がすり減ってしまいます。
犯人探しから改善へ ― フォーカスフォワード質問
そんなときは、相手を攻撃せず
未来に目を向ける**フォーカスフォワード質問(Focus-Forward Question)**が役立ちます。
これは国際コーチング連盟(ICF)でも紹介される手法で、
「責任の押しつけ合い」から「課題解決」へ
自然に話を進めるための質問です。
以下は「自分のせいだ」と名指しされたときに使える
短く穏やかなフォーカスフォワード質問です。
- 「その点を一緒に確認したいです。では、これから改善できることは何があるでしょうか?」
─ 感情より事実と未来に視線を移す。 - 「原因を探すより、次に良くするために何が一番大切だと思いますか?」
─ 犯人探しを終わらせ、共通のゴールを描く。 - 「自分も改善できる部分を考えたいです。あなたが改善できることは何でしょうか?」
─ 互いの行動に焦点を合わせ、協働へ導く。
短い一言で“対立”から“協働”へ。
この切り替えが、心を守りながら前に進む力になります。
他責と自責をどう見つめるか
- 他責は、自分を守る力。
ただし学びのチャンスを遠ざけることもあります。 - 自責は、成長への入口。
けれど過剰になると心をすり減らしてしまう。
米国の研究(Neff & Dahm, 2015)は、
自分を客観的に見つめ、
優しく受け止める「自己慈悲」が
両者のバランスを保つ鍵になると示しています。
自分の傾きを知るチェックリスト
以下の20項目に「はい/いいえ」で答えてみましょう。
奇数番号=自責寄り、偶数番号=他責寄りです。
- 失敗したときはまず自分の行動を振り返る
- 誰かの指示不足を最初に考える
- 改善点をメモして次に活かす
- 機械トラブルなら自分に責任はないと思う
- 「自分にできることは?」とつぶやく
- 天候や環境のせいにして安心する
- ミスを学びに変えるのが得意
- チームメンバーの動きが原因と思う
- 相手に迷惑をかけたか想像する
- 上司や会社の方針をまず疑う
- 同じミスを防ぐ工夫を考える
- 運が悪かったと思う
- 事実確認をしてから判断する
- その場にいなかった人の影響を考える
- 自分の感情を整理してから話す
- 「誰かが悪い」とすぐ浮かぶ
- 必要なら謝罪を選ぶ
- 先に謝ったほうが損だと感じる
- 自分を責めすぎないよう意識する
- 責任は上司が取るものと思う
判定
- 自責スコア=奇数の「はい」
- 他責スコア=偶数の「はい」
アドバイス
- 自責多め(14点以上)
→ 成長志向が強み。週1回は「できたこと日記」を。 - 他責多め(14点以上)
→ 自己防衛力はあるが学びが停滞しやすい。
毎回「自分が改善できる1%」を探す習慣を。 - バランス型
→ 状況に応じた柔軟さが魅力。
信頼できる相手に定期的に話を聞いてもらうとさらに安心。
人に話すことで整う
自分ひとりで答えを出そうとすると、
どうしても偏りが生まれます。
コーチや信頼できる友人に話すことで、
自責と他責のちょうどよい真ん中を
見つけやすくなるはずです。
他責も自責も、
どちらか一方が“正しい”わけではありません。
大切なのは、状況を俯瞰して選べる自分でいること。
あなたは今、どちらに傾いていますか?
そして、そのバランスを誰と話してみたいですか?
今日も佳き日に
コーチミツル
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