先日、土用干しを終えた梅干しの片づけをしていると、古びた容器がひとつ、目に留まりました。埃をかぶり、見た目にはもう処分してもよいような姿。ところが、中には梅酢のような液体が残っていました。
ふと「これは…」と思って、匂いをかいでみる。指先につけて味をみる。
むむむ、大丈夫だ。
そう思った瞬間、容器の側面にあった「令和5年6月5日」の文字が目に入りました。書いたのは、今年の一月に旅立ったおふくろの字です。
おふくろの味をもう一度
おふくろが遺してくれた味。まさか半年以上たって、その味にまた出会えるとは思ってもいませんでした。今はもう、自分の手で味噌汁をつくり、残り野菜で浅漬けを漬け、今年は初めての梅干しづくりにも挑戦しています。
それでも、あの味はもう食べられないと思っていた。
でも、こうしておふくろの字の残った梅酢に出会ったとき、不思議と、もう一度あの味に会えたような、胸が熱くなる感覚がありました。
梅酢はどれくらいもつの?
では、この「梅酢づけ」、果たしてどのくらい保存が可能なのでしょうか?
調べてみると、梅酢は殺菌・防腐作用のあるクエン酸や塩分を多く含むため、冷暗所で適切に保管されていれば、数年は保存可能とされています【参考:農研機構/梅酢の機能性成分と保存性】。特に、赤紫蘇を使用した「赤梅酢」は抗菌性も高く、色落ちがなければ風味も維持されやすいそうです。
ただし、開封後は冷蔵庫保存がおすすめです。
梅酢で何が作れるの?
おふくろの味に近づくため、梅酢でできる料理も少し調べてみました。
梅酢の活用例:
- 梅酢ドレッシング:オリーブオイル・しょうゆ・梅酢を混ぜるだけで、さっぱりサラダに。
- 梅酢の浅漬け:きゅうりや大根に少しの梅酢をまぶすと、昔懐かしい酸味に。
- 梅酢ごはん:ごはんに混ぜるだけで、おにぎりや弁当が傷みにくくなる。
- 鶏の梅酢煮:砂糖と醤油とともに鶏肉を煮れば、さっぱり夏向けのおかずに。
どれも、おふくろが作っていそうな、素朴でほっとする味ばかりです。
食卓に残る、記憶という調味料
「おふくろの味」とは、単なる料理のことではないのかもしれません。
料理そのものよりも、その時の空気や匂い、一緒に囲んだ食卓や会話――そうしたものすべてが重なって、心の奥に残っていく。
自分も少しずつ、自分の手でその味を再現できるようになってきた今、ようやく思えるのです。
もう一度、あの味に会えることが、どれだけ幸せなことか――
そんな記憶が、あの古びた容器からそっと蘇った気がしました。
あなたにとっての「おふくろの味」は、どんな一皿ですか?
今日も佳き日に
コーチミツル
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参考文献:
- 農研機構「梅酢の抗菌性と保存効果に関する研究」(https://www.naro.go.jp/)
- 農林水産省「うめを使ったレシピ」より(https://www.maff.go.jp/)