202.中国地方の“唄声”が松江に集う(Jazz Singers Showcase in SHIMANE レポート)

2025年7月6日(日)、松江市総合福祉センターで開催された

「Jazz Singers Showcase in SHIMANE」に行ってきました。

このイベントは、中国地方で活躍する女性ジャズボーカリストの方々が集結し、それぞれの個性あふれる唄声を披露する特別な一日。

そして、実は自分にとっても少し特別な想いがあるイベントでした。

あの唄声との再会、そして主催者としての実千代さん

自分は以前、伊藤実千代さんのバックでトランペットを吹かせていただいたことがあります。

あのハスキーで雰囲気のある唄声に、すっかり魅了されたひとりです。

その実千代さんが今回、主催者としてこのショーケースを山陰(実千代さんご本人は“ヤマカゲ”と呼んでいました)で初開催されました。

準備には約5ヶ月。MCでは涙あり笑いあり、本当に素敵な時間を届けてくださいました。

夜のヒットスタジオ風のリレー形式が新鮮!

イベントでは、前のシンガーが次のシンガーを紹介するという

夜のヒットスタジオ形式のリレーがとてもユニークでした。

紹介を受けて登場するたびに、ステージの空気感がガラッと変わり、

その人の世界観が一瞬で会場全体を包み込みます。

それぞれのボーカリストが持つ魅力が際立ち、

“ジャズの中の多様性”を、体全体で感じることができました。

英語の発音も、MCの美しさもプロフェッショナル

印象に残ったのは、唄声はもちろんのこと、

話す声やMCの内容、英語の発音までが驚くほど洗練されていたこと。

まるでアナウンサーのように滑舌よく、

会場の空気をやわらかくする語り口に、ただただ感心してしまいました。

音楽とともに“言葉を届ける力”の大切さを感じました。

出演の方々は、

ACHIさん

軽快な「Route 66」でショーケースの幕を開けたトップバッター。

FM山陰のSUN-IN MORNINGでパーソナリティもされていますが、明るさと軽やかさで会場の空気を一気に温めてくださいました。

遠藤 マリさん

「Bye Bye Blackbird」「Encontros e Despedidas」など、

ジャズスタンダードからブラジリアンまで幅広い世界観を届けてくださいました。

絹川 ゆり子さん

「But Not For Me」「Charade」では、しっとりとしたバラードと華やかな表現を披露。

表情豊かな唄声が印象的でした。

蔵本 りささん

「Nica’s Dream」「Jazz Blues メドレー」で、

広島時代に一度唄声を聴かせていただきファンになりましたが、スウィング感とハードバップの熱を伝えてくださいました。

All Stars アンサンブル

第1部の締めくくりは出演者全員による「Precious」。

まさに“声の共演”という名にふさわしい、感動のステージでした。

【第2部】

松江ニューオーリンズブラスバンドさん

「Royal Garden Blues」「Mardi Gras in New Orleans」など、

本場さながらのノリとリズムで会場を一気にニューオーリンズの空気に!

島田 知衣さん

「Love You Madly」「Darn That Dream」では、ジャズらしい情感と大人の雰囲気を醸し出しました。

Kayoさん

「愛の賛歌」「Feeling Good」——

特にヴァース※が秀逸、“愛の賛歌”の深みある表現が印象的で、会場が静かに聴き入る瞬間も。※本編(コーラスやテーマ)に入る前の導入部分

因幡 由紀さん

「Love For Sale」「Day In, Day Out」など、軽快なリズムとともにエンターテイメント性の高いステージを展開。

伊藤 実千代さん

ラストの「So Many Stars」は、まさに締めにふさわしい一曲。

ハスキーで深みある唄声が、夜の余韻を美しく締めくくりました。

そしてアンコールは裏方をされていたボーカリストも一緒に全員でコーラス。最高でした。

演奏で支えた素晴らしいミュージシャンたち

シンガーたちの魅力をより深く引き出していたのが、

卓越した演奏力と繊細な感性を備えたサポートバンドの皆さんです。

ギターは 足塚正治さん。

シンガー一人ひとりの呼吸にぴたりと寄り添うようなバッキング、

そしてソロではメロディをなぞるだけでなく、空間を彩るフレーズ、持ち替えでのガットギターも響かせていました。

全体のアンサンブルに深みと温かみを加えていたのが印象的です。

ピアノは 田中啓三さん。

パワーのある多彩なタッチが印象的で、

イントロや間奏でのハーモニー感、場面の切り替えに見せる柔軟さが絶妙でした。

ときに情熱的に、ときには静かに、音で物語を紡いでくれるような演奏でした。

ベースは 角伸幸さん。

低音からじんわりと湧き上がるグルーヴが、

演奏全体に心地よい土台を与えており、また、イントロでの独創的な演奏も輝きがあり

シンガーや他の楽器が自由に表現できる空間を見事に支えていました。

ドラムは 小林茂文さん。

ブラシの繊細な表現から、スイング感あるリズムの牽引まで、

場面ごとの空気を見極めながら、立体感あるビートで音楽に生命力を吹き込んでいました。

“音の間”を大切にした余白のあるプレイが心に残りました。

この4人の名手によるアンサンブルが、

シンガーのパフォーマンスを確かに支え、

このステージを“ジャズならではの一期一会の空間”へと高めてくれたことは間違いありません。

それぞれのソロにも、そして沈黙の間にも、職人技が光る。

そんな素晴らしい演奏でした。

唄には“歌詞”という武器がある

音楽をしている者として、強く感じたことがあります。

それは、唄には「歌詞」があるということ。

メロディだけではなく、言葉そのものに意味を乗せて、観客にダイレクトに届けることができるのが、唄の特別な力です。

トランペットではどうしても届かない、“ことば”という媒体を通じて伝える世界に、圧倒されました。

会場の一体感と、高揚

会場全体が、拍手と歓声、指笛に包まれたあの一体感。

ステージと客席が一つになり、空気そのものが震えるような高揚感。

ここ数年で味わったことのないような、

心の底から湧き上がる熱を感じた瞬間でした。

そして、ひとり打ち上げへ

終演後、その余韻を抱えたまま、帰り道にふらっと立ち寄った焼き鳥屋。

焼き鳥片手にキンキンに冷えたビールを飲みながら「この気持ちを忘れないように」と、スマホに感想を打ち込みました。

そのメモが、いまこうしてブログとして形になっています。

地方だからこそ“本物”がある

このイベントを通じて、改めて強く感じました。

地方にも、魂を揺さぶるような“本物の音楽”があるということ。

松江でこのようなライブに出会えたこと。

その瞬間に立ち会えたことを、心から嬉しく思います。

またあの場所で、あの空気を感じたい。

そんな想いを胸に、帰路につきました。

今日も佳き日に

コーチミツル

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