先日、佐太神社の「お忌(おいみ)さん」に初めて正式に参りました。
佐太神社へはこれまで何度も足を運んでいますが、この“神在月の特別なお祭り”に合わせてお参りするのは今回が初めてでした。
多久の湯と言う温泉でサウナ後の露天風呂に入っているころ、雷鳴がとどろきました。この地域ではこの時期、雷や強風、時には雪が降るほど天気が荒れることを“お忌荒れ(おいみあれ)” と言っています。そんなことを想い出し、急遽佐太神社へお参りすることにしました。
それまで降っていた雨が不思議なことに、駐車場に車を止めた瞬間、雲が切れ、光がふわっと差し込んできました。
「よう来たね」と言われたような温かさと同時に、雨上がりならではの 清々しい空気 が境内に広がっていました。
光が射す境内に立っていたこと自体が、何かに導かれたような特別な感覚でした。
境内に差し込む光 ― 迎え入れられたような時間

雨上がりの空気は澄んでいて、深呼吸をすると身体の中まで浄化されるようでした。
最終日で人影も少なく、歩くたびに心がスッと整っていくような静けさに包まれていました。

手水舎の花 ― 雨上がりにそっと彩りを添える

手水舎には色とりどりの花が浮かび、雨粒が残った花びらが光にきらめく様子がとても美しく、「雨そのものも受け入れている」 佐太神社らしい佇まいを感じました。
龍蛇神の特別拝観 ― 生き物がそのまま“神さま”になるという感性
佐太神社のお忌さんには、その年に見つかったウミヘビを龍蛇神(りゅうじゃしん)として祀る
という独特の文化があります。

今回拝観させていただいたのは、海藻(ほんだわら)の上に静かに安置された セグロウミヘビ。
腹は黄色く、尾は剣のように細く伸び、朱色の台座は松江藩から献上された特別なものだそうです。
写真撮影は禁止でしたが、“気配だけを静かに受け取る” 時間がむしろありがたく、生き物の姿のまま神さまとして迎える日本の感性を強く感じました。

神在月と佐太神社 ― 神々が出雲に入る“入口”
旧暦十月は出雲では「神在月(かみありづき)」。
全国の神々が集まり、今年のご縁や出来事を話し合う大切な時期です。
佐太神社は、神々が出雲に集まられるの “場” としても語られています。
導きの神・佐太大神(猿田彦命)を祀るこの場所は、古くから人々の祈りとともに土地を守り続けています。

雨上がりの澄んだ空気とともに感じたのは、“満ちていく静けさ” でした。
長い年月をかけて積み重ねられてきた祈りが、確かにこの土地に息づいているのだと思います。
ラフカディオ・ハーンが描いた「蛇の神」— 原文と訳文をそっと添えて
佐太神社のある出雲の文化を、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は深い敬意をもって描き残しています。
とくに、蛇を神さまの姿として敬う感性に、ハーンは強く心を動かされたようです。

以下は『日本の面影』(Glimpses of Unfamiliar Japan, 1894*) からの原文です。
■ ハーン原文
“In many parts of Izumo the serpent is worshipped as a deity,
or rather as a form in which some kami chooses to become visible.”“At Sada Shrine I heard strange stories of a serpent-god appearing in the rice-fields,
and of the peasants making offerings to it with profound reverence.”
■ 訳文
「出雲の多くの地域では、蛇は神として崇められています。
あるいは、神が姿を現す際に選ぶ“かたち”として敬われていると言ったほうがよいでしょう。」「佐太神社では、田んぼに姿を現した蛇の神さまの不思議な話を聞きました。
村人たちは深い敬意をもって供物をお供えしたそうです。」
今回、龍蛇神を拝観したときの静かな空気感が、ハーンの文章と自然に重なっていきました。
“自然の中に神さまの気配を感じる” という日本の感性が、100年以上前から変わらず息づいていることに、不思議なつながりを感じました。
橋の上で立ち止まった帰り道

帰り際、ふと橋の上で振り返ると、社殿の向こうに柔らかな光が差し込んでいました。
雨でも晴れでもない、“浄められたあとの空”のような優しい色で、今日ここに来た意味が、すっと心の中に落ちていきました。
最後に、あなたへの問い
あなたが最近、「これは導かれたな」と感じた瞬間はありますか?
天気の変化も、偶然のタイミングも、ときには私たちの背中をそっと押してくれることがあります。
今日も佳き日に
コーチミツル
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